KLANG6時間目『美』分析

KLANG5時間目『HARMONIEN』全体を素材としてバス・クラリネット、トランペット、フルートのための三重奏に拡大することで作曲。

5つのセクションはHARMONIENのそれと対応、サブ・セクションは10に拡大
(第I部だけ9つ、ただし導入部をカウントすればここも10)

HARMONIENの3つの版を同時に演奏する発想。
したがってバス・クラリネットのみ他のパートより長2度低く演奏
ただし5つのサブ・セクションの演奏順序がパートごとに置換されている(表1)
5つのサブセクションのすべてが演奏されるまでは、同じサブセクションは繰り返し演奏されない(太線参照)

表1:基本構造(上からfl, tp, b-cl)

表1:基本構造(上からfl, tp, b-cl)

 

上記基本構造に加え、手の空いているパートはしばしば、別の奏者の演奏するサブ・セクションに注釈をつける(表2)。
・構成音のいくつかの音にユニゾンで重なり持続音を作る(しばしばグリッサンドなどで変化)。
・完全4度、オクターヴなどの平行和音の付加、あるいは、構成音を適宜置換し和声付に利用

表2:より詳細な構造

表2:より詳細な構造

凡例)
E:挿入句
S:コーダ(バス・クラリネット版にはこの部分は存在しないので、このパートでは演奏されない、バス・クラリネットはかわりに、セクションVのメロディー部分のみをつなげて演奏[melo])
h:和声的なコメント
u:ユニゾン的なコメント

 

HARMONIENの各サブ・セクションは固有のテンポを持ち、rit.などのテンポ変化も伴うため、本作で、複数のサブセクションが同時に演奏される箇所では必然的にポリテンポが生じる。(表3、他のパートに付随する部分は、主要なパートのテンポに同期する)
これらの複雑なテンポの交錯は指揮者なしのアンサンブルにより実現される。
HARMONIENではほぼ常にcresc.などのディナーミクの変化を伴いながら演奏されるが、その指示も踏襲されているので、各パートの強度の関係も非常に複雜になっている。

表3:テンポ構造

表3:テンポ構造

参考)
シュトックハウゼンのポリテンポの探求:
GRUPPEN(1955-57)(3つのテンポが同時進行)
ZEITMASZE(1955-56)(奏者ごとの独立したテンポ設定)
HOCH-ZEITEN(2001/02)(5つのテンポが同時進行、クリックトラック使用)
HIMMELFAHRT(2004/05)(キーボード奏者の左右の手が常に異なるテンポで演奏)