シュトックハウゼンCDガイド 60-69

CD60 トランペット作品集

ARIES(1977/1980) for trumpet and electronic music

トランペット:Markus Stockhausen
電子音楽制作:Karlheinz Stockhausen

IN FREUNDSCHAFT(1977) for trumpet in E-flat with forth-attachment

トランペット:Markus Stockhausen

HALT(1978) for trumpet and double-bass

トランペット:Markus Stockhausen
コントラバス:Niek de Groot

PIETÀ(1990/91) for flugelhorn and soprano

トランペット:Markus Stockhausen
ソプラノ:Annette Meriweather

録音:1995年

このアルバムは、以前EMIから「Markus Stockhausen plays Karlheinz Stockhausen」というタイトルで発売されていたものと同一音源である。

関連録音:
CD26:シリウス
CD33:アリエス
CD43:ピエタ


 

CD61 LITANEI 97 / 「短波」世界初演

LITANEI 97(1997) for choir and conductor

演奏:南ドイツ放送ヴォーカル・アンサンブル
指揮:Rupert Huber

録音:2000年

KURZWELLEN(1968) for 6 players

演奏:
エレクトロニウム、短波ラジオ:Harald Bojé
タムタム、短波ラジオ:Alfred Alings, Rolf Gehlhaar
ヴィオラ、短波ラジオ:Johannes Fritsch
ピアノ、短波ラジオ:Aloys Kontarsky
電子フィルター、ポテンショメーター:Karlheinz Stockhausen

録音:1968年(世界初演のライヴ録音)

LITANEI 97は「7つの日より」(1968)の中のテキスト「LITANEI」に、1997年に新たに音楽を付けたもの。
各合唱団員のグリッサンドが複雑に絡み合う様子が非情に印象的。
同年の1968年に作曲された「短波」の同年の世界初演のライヴ録音も併録されている。

関連録音:
CD14:7つの日より
CD13:「短波」スタジオ録音


 

CD62 3x REFRAIN 2000

3x REFRAIN 2000(2000)
for piano with 3 wood blocks,
sampler-celesta with 3 antique symbals,
vibraphon with 3 cowbells and glockenspiel,
sound projectionist

演奏:
ピアノ他:Benjamin Kobler
サンプラー・チェレスタ他:Antonio Pérez Abellán
ヴィブラフォン他:Andreas Boettger
解説、サウンドプロジェクション:Karlheinz Stockhausen

録音:2000年

初期の名作「ルフラン」(1959)を、3つの確定されたヴァージョンとして楽譜に固定した作品。
3つの演奏の間にシュトックハウゼン自身による解説が入る。
英語盤、ドイツ語盤の2種類が発売されている。

関連録音:
CD6:ルフラン


 

CD63 KINDER-FÄNGER他

LUZIFERs ZORN(1987)
for bass, actor, a synthesizer player, tape, sound projectionist

バス:Nicholas Isherwood
俳優:Alain Louafi
シンセサイザー:Antonio Pérez Abellán

DIE 7 LIEDER DER TAGE(1986) for voice and synthesizer

声:Kathinka Pasveer
シンセサイザー:Antonio Pérez Abellán

DIE 7 LIEDER DER TAGE(1986) for flute and synthesizer

フルート:Kathinka Pasveer
シンセサイザー:Antonio Pérez Abellán

DER KINDER-FÄNGER(1986)
for alto flute with piccolo, 2 synthesizer players,
percussionist, tape, sound projectionist

フルート:Kathinka Pasveer
シンセサイザー:Antonio Pérez Abellán, Benjamin Kobler
打楽器:Antonio Pérez Abellán, Karlheinz Stockhausen

サウンド・プロジェクション:Karlheinz Stockhausen

録音:2001年

DER KINDER-FÄNGERは「月曜日」の第3幕からの派生作品。
声も発するなど様々な奏法を駆使する目まぐるしいフルート・パート、頻繁に挿入される様々な具体音、軽妙なシンセや打楽器の音色などが見事に融合した驚愕の作品。

関連録音:
CD77:DIE 7 LIEDER DER TAGE(テノールによる演奏)
CD57:誘拐(ピッコロ・ソロ版)
CD78:誘拐(サックス・ソロ版)


 

CD64 EUROPA-GRUSS他

EUROPA-GRUSS(1992/2002) for winds and synthesizers

演奏:Stockhausen-Ensemble
サウンド・プロジェクション:Karlheinz Stockhausen

STOP und START(2001) for 6 instrumental group

演奏:Stockhausen-Ensemble
指揮:Karlheinz Stockhausen

TOW COUPLES(1992/99) Electronic and Concrete Music

女の声:Kathinka Pasveer
男の声、電子音楽制作:Karlheinz Stockhausen
シンセサイザー:Simon Stockhausen

Electronic and Concrete music for KOMET(1994/99)

女の声(多重録音):Kathinka Pasveer
電子音楽制作:Karlheinz Stockhausen
シンセサイザー:Simon Stockhausen

LICHT-RUF(1995) for trumpet, basset-horn, trombone or other instruments

シンセサイザー:Simon Stockhausen
リアリゼーション:Karlheinz Stockhausen

録音:2002年

EUROPA-GRUSSはシュトックハウゼン流ファンファーレとでも表現できる輝きに満ちた響きを持つ作品。
STOP und STARTは60年代の作品「STOP」の不確定な部分を確定されたスコアに固定した作品。
TOW COUPLESとKOMETのための電子音楽は、「金曜日」の電子音楽の派生作品。
LICHT-RUFは演奏会の休憩の合図などの用途を想定して作られたごく短い作品。

関連録音:
CD4「ストップ」(1973年録音)
CD48「金曜日」のカップル
CD49「金曜日」の電子音楽
CD57「コメット(ピアノ曲XVII)」
CD79「コメット」Andereas Boettgerによる版
CD82「コメット」Stuart Gerberによる版


 

CD65 「金曜日」の10の場面

10 Scenes of FRIDAY from LIGHT

「光の金曜日」の歌手と器楽奏者で演奏される「リアル・シーン」の単独演奏版を抜き出した版。
マニア向け。2枚組

関連作品:
CD50:「光の金曜日」全曲


 

CD66 水曜日の迎え

MITTWOCHS-GRUSS(1998) Electronic Music

シンセサイザー:Antonio Pérez Abellán
リアリゼーション:Karlheinz Stockhausen

この作品は8チャンネルで再生されるシンセの持続音を中心とした電子音楽で、『光』の「水曜日」の上演前にロビーなどで演奏されるための作品です。

この手の電子音楽といえば「オクトフォニー」がすぐ思い浮かびますが、「オクトフォニー」の様など派手で重厚なサウンドではなく、音数を極端に節約したスリムな作りになっていますが、なぜかスカスカな感じがしないのです。
ひとつひとつのサウンドのプログラミングがものすごく独特で非常に強烈な個性を持っていることと、サウンドの立ち上がりの多彩さ、時折表れるプヨプヨプヨといったようなサウンドのゆらぎが極めて効果的で50分という長い演奏時間にかかわらず決して聞き飽きる事がありません。
カティンカの声も電子的にモジュレートされながら巧みに挿入されていますし、シュトックハウゼンがめちゃくちゃ普通に「Mittwochs-Gruss」としゃべるところは(個人的には)妙にぶっとびます(笑

ひょうひょうとしたポップな感覚も独特で、この作品は結構テクノ世代の人に受けそうな感じがします。特に、クラスターなどジャーマン・ロック系の電子音楽やブライアン・イーノあたりの音楽を好む人なら絶対気に入ると思います。

関連録音:
CD54:ミヒャエリオン


 

CD67 ENGEL-PROZESSIONEN

ENGEL-PROZESSIONEN(2000) for a cappella choir

演奏:
オランダ放送合唱団
ソプラノ独唱:Isolde Siebert アルト独唱:Janet Collins
テノール独唱:Hubert Mayer バス独唱:Andreas Fischer
合唱指導:James Wood, David Lawrence
サウンド・プロジェクション:Karlheinz Stockhausen

「日曜日」第2場面。
ア・カペラの合唱のためのEngel-Prozessionenは演奏会場内を動き回る7群のコーラスと客席を取り囲むように配置されピアニシモで持続和音を歌うトゥッティ・コーラスで構成され、これをステレオでミックスするのはほとんど不可能ですが、通常の合唱曲の録音では非常識ともいえる独特のミックスを施しこの問題を解決しています。「水曜日」の「世界議会」での精緻きわまりない合唱書法も素晴らしかったですが、この作品ではそれを上回る複雑さと美しさを味わうことが出来ます。この作品で見られる全パートが細かい音形で軽やかに動き回りますが、その自由さは声楽の限界を越えて精密な器楽合奏を聞いているような感じになります。
ちなみに背景でかすかに演奏されるピアニシモのトゥッティ・コーラスはそれだけをよく聞くことが出来るように、このパートだけを抜き出したミックスがもう一枚のCDに収録されていますが、これも実に美しいです。


 

CD68 LICHT-BILDER

LICHT-BILDER(2002/03)
for basset-horn, flute with ring modulation,
tenor, trumpet with ring modulation, synthesizer

演奏:
バセットホルン:Suzanne Stephens, フルート:Kathinka Pasveer
テノール:Hubert Mayer, トランペット:Marco Blaauw
シンセサイザー:Antonio Pérez Abellán
サウンド・プロジェクション:Karlheinz Stockhausen

この作品は「日曜日」の第3場面に当たる作品ですが、『光』の長大な連作の最も最後に完成させられた作品です。

「日曜日」の諸作品はどれも『光』シリーズの最後を飾るのにふさわしい美しい作品ばかりでしたがこの作品も非常に美しい仕上がりとなっています。

この作品は「日曜日」の中ではもっとも小編成なのですが、全ての奏者に非常に高度なテクニックと音楽性が要求される非常に複雑な音楽となっています。シンセ奏者はフルートとトランペットの音をリングモジュレートするためのサイン波を舞台裏から提供するだけなので、実際にステージに表れるのはテノール、フルート、バセットホルン、トランペットの4人の奏者だけです。40分間この4人の演奏者の間で行われる濃密な音楽的な対話は一見地味ですが、長年のシュトックハウゼンの創作活動の集大成と言ってもいい高度な芸術性を湛えています。「ミクストゥール」や「マントラ」でも試みられたリングモジュレーションの効果も絶妙で、過激に楽器の音色を変調してこけおどし的な効果を狙うことはなく、リングモジュレーションによる繊細な音色変化とハーモニーの重層化は聴けば聴くほど味わいを増して来ます。

ちなみにこのCDは2枚組になってますが、2枚目は「学習用」にリングモジュレートされた音を除外した生楽器のみのミックスになっていて、リングモジュレーションの効果を比べる事が出来るようになっています。


 

CD69 DÜFTE-ZEICHEN

DÜFTE-ZEICHEN(2002) for 7 vocalists, boy’s voice, synthesizer

演奏:
ソプラノ:Isolde Siebert, Ksenija Lukič
アルト:Susanne Otto
テノール:Hubert Mayer, Bernhard Gärtner
バリトン:Jonathan de la Paz Zaens
バス:Nicholas Isherwood
子供の声:Sebastian Kunz
シンセサイザー:Antonio Pérez Abellán
サウンド・プロジェクション:Karlheinz Stockhausen

「日曜日」第4場面。
Düfte-Zeichenは全曲が名曲の「日曜日」の中でもとりわけ音楽の美しさと神秘性において群を抜く出来栄えだと思います。
7人の歌手とボーイソプラノ、シンセサイザーというシンプルな編成ですがそれぞれの歌手のソロやデュエットなどでの巧みなメロディーの取り扱い方、基本的に持続和音をのばすだけのシンセパートが時折奏する星の煌めきや流れ星を思わせるようなシンプルで且つ効果的な合いの手など円熟の境地に達した作曲家ならではの味わい深い音楽を堪能することが出来ます。
特にこの作品の後半になって登場するアルトとボーイ・ソプラノのデュオ、それをいろどる6人の歌手によるシュティムングなども思い起こさせるハーモニーは絶品です。

関連録音:
CD70:周の9つの香り