CD50 「光の金曜日」全曲
FREITAG aus LICHT(1991-1994)
・FREITAG-GRUSS
・FREITAG-VERSUCHUNG
・FREITAG-ABSCHIED
出演:
EVA: Angela Tunstall(ソプラノ)
LUDON: Nicholas Isherwood(バス)
KAINO: Jürgen Kurth(バリトン)
ELU: Suzanne Stephens(バセットホルン)
LUFA: Kathinka Pasveer(フルート)
Synthibird: Massimiliano Viel(シンセサイザー)
ライプツィヒ歌劇場合唱団、児童合唱団
中部ドイツ放送児童合唱団
ライプツィヒ・J.S.バッハ音楽学校の児童による管弦楽団
録音:1996年(ELUFAのみ2002年)
ミックス・ダウン:2001年/2002-2003年
関連録音:
CD48:金曜日のカップル
CD49:「金曜日」のサウンドシーンを伴う電子音楽
CD65:「金曜日」の10の場面
CD51 世界議会
WELT-PARLAMENT(1995) for a cappella choir
演奏:南ドイツ放送合唱団
指揮:Rupert Huber
録音:1995/96年
「水曜日」第1場面。ア・カペラ合唱の極致。
CD52 オーケストラ・ファイナリスト
ORCHESTER-FINALISTEN(1995/96)
for orchestra and electronic music
演奏:ASKOアンサンブル
録音:1996年
「水曜日」第2場面。
通常のオーケストラ曲のレパートリーとは逆に、沢山のソロ・パート、ごくわずかの総奏部分という構成になっている。
終始白昼夢のように流れ続ける電子音楽も印象的。
CD55:水曜日の別れ
CD53 ヘリコプター弦楽四重奏曲
HELIKOPTER-STREICHQUARTETT(1992/93)
for string quartet, 4 helicopters with pilots and 4 sound technicians
4 television transmitters, 4 x 3 sound transmitters
auditorium with 4 columns of televisions and 4 columns of loudspeakers
sound projectionist with mixing console
moderator (ad lib.)
演奏:アルディッティ弦楽四重奏団
録音:1995年(世界初演ライヴ録音)、1996年(スタジオ録音)
ミックス・ダウン:1999年
「水曜日」第3場面。4台のヘリコプターに乗った4人の弦楽奏者のための作品。
4人の演奏はヘリコプターのプロペラの音と共に聴衆のいる会場へラジオ中継され、ミキシングされる事により4台のヘリコプターのプロペラ音をともなった弦楽四重奏として成就する仕掛けになっている。それぞれの弦楽器はトレモロやグリッサンドを多用する事によりヘリコプターのプロペラの音と対応するように作曲されている。
離陸時に演奏される序奏部と着陸時に演奏されるコーダに挟まれた主要部では、ミヒャエル、エーファ、ルツィファーの「光」の3声のスーパー・フォーミュラ(とスーパー・フォーミュラの「水曜日」部分の断片)が大幅に引き延ばされて3回演奏されるが(3声の配置、音高、テンポは各回ごとに異なる)、それぞれの声部の各音を4つの楽器が交替しながら演奏するため、3つのフォーミュラが左右に複雑に交錯しながら聞こえる按配になっている。(公式サイトのこちらに楽譜の一部がのっているが8段ある楽譜の上4段がフォーミュラがどのように聞こえるか再構成した「観賞用」楽譜、下4段が各奏者が実際に演奏する楽譜になっている)
しかも前述の通り、こうした複雑な作業はほとんどグリッサンドを伴って行われるため、この3声のスーパー・フォーミュラの空間移動を聴き分けるためには、かなりの集中力を必要とする(そして当然このフォーミュラに親しんでいる必要もある)。従って、この作品は一般によく知られている割には、「光」の初心者にとっては完全に理解する事の難しい「上級者向け」の作品であると言えるかもしれない。
ただし、ルツィファーのフォーミュラに含まれる「アイーンス」「ツヴァーイ」などとドイツ語で数を数える部分は4人の弦楽奏者の声によって交替で「歌われる」ため、この部分の空間移動の効果は容易に聴取できるであろう。その他スーパー・フォーミュラにふくまれる「気息音」「クリック音」などの各種ノイズの指定も、弦楽器の特殊奏法に「翻訳」されて演奏される。
そして驚くべき事はこの曲芸のようなポリフォニーが、互いの演奏を聴く事のできない4台のヘリコプターで演奏されている、という事実である(会場から送られるクリック・トラックを聴いて演奏する事によってテンポを同期している)。一見簡単そうな数を数える部分でテンポがずれたらどうなるか考えればこのことは一目瞭然であろう。
会場に備え付けられた4台のヘリコプターからのモニタ映像、その上部のスピーカーを組み合わせる事によって、3声のフォーミュラの複雑な交錯の空間移動が、4台のヘリコプターの間で行われている事を視覚、聴覚の奏法から確認する事が出来るのだ。
この2枚組のCDには世界初演のライヴ録音とスタジオ録音の2種類の演奏を収録。
ライヴ録音には世界初演時のシュトックハウゼンの司会進行や演奏後の質疑応答なども収録されている。
スタジオ録音は、世界初演の後に書き足したホモフォニックなコーダ部分を含んだ改訂版による演奏。
(Auvidisレーベルからも同一音源のCDが発売されているがこちらはスタジオ録音のみを収録)
CD54 MICHAELION
MICHAELION(1997)
for choir / bass with short-wave receiver / flute, basset-horn, trumpet, trombone /
a synthesizer player, tape / 2 dancers / sound projectionist
合唱:ロンドン・ヴォイスィズ
指揮:Ben Parry
バス:Michael Leibundgut
フルート:Chloé L’Abbé
バセットホルン:Fie Schouten
トランペット:Marco Blaauw
トロンボーン:Stephen Menotti
シンセサイザー:Antonio Pérez Abellán
サウンド・プロジェクション:Kathinka Pasveer
録音:2012年
『光の水曜日』第4場面。『光』の全作品の中でも、とりわけ複雑で繊細なスコアによる場面。ソリストの集合と表現してもよい緻密な合唱パート、器楽のソリスト、短波ラジオを伴うバス独唱が終始動き回りながら演奏を続ける1時間。直観音楽集『7つの日より』の「リタナイ LITANEI」のテキストが弱音で歌われる場面もあるなど、1960年代後半の空気感が忍び込んでいることも興味深い。
CD55 BASSETSU-TRIO、水曜日の別れ
BASSETSU-TRIO(1997) for basset-horn, trumpet and trombone
バセットホルン:Suzanne Stephens
トランペット:Marco Blaauw
トロンボーン:Andrew Digby
録音:1999年
MITTWOCHS-ABSCHIED(1996) electronic and concrete music
BASSETSU-TRIOは「水曜日」の最終場面「MICHAELION」後半のトリオ部分を単独作品として抜き出したもの。『水曜日の別れ』は『オーケストラ・ファイナリスト』の電子音楽を抜きだしたもの。
関連録音:
CD54:ミヒャエリオン
CD52:オーケストラ・ファイナリスト
CD61:リタナイ 97
CD56 ピアノ曲I-XIV
KLAVIERSTÜCKE I-IV(1952)
KLAVIERSTÜCKE V-VIII(1954/55)
KLAVIERSTÜCKE IX, X(1954/61)
KLAVIERSTÜCK XI(1956)
KLAVIERSTÜCK XII(1979/83)
KLAVIERSTÜCK XIII(1981)
KLAVIERSTÜCK XIV(1984)
ピアノ:Ellen Corver
録音:1997/1998年
アコースティック・ピアノのために作曲された「ピアノ曲」の全曲を収めた3枚組。
左チャンネルの最低音から右チャンネルの最高音まで、目の前に鍵盤が並んでいるかのような特殊なミキシングと高音質な録音が絶品。
CD57 フルート、シンセサイザー曲集
ZUNGENSPITZENTANZ(1983)
for piccolo flute, euphonium, synthesizer player and percussionist
ピッコロ:Kathinka Pasveer
ユーフォニウム:Michael Svoboda
シンセサイザー:Simon Stockhausen
打楽器:Andreas Boettger
録音:1995年
KLAVIERSTÜCK XVI(1995)
for tape, stringed piano, electronic keyboard instruments
ピアノ、シンセサイザー:Antonio Pérez Abellán
録音:2000年
FREIA(1991) for flute
フルート:Kathinka Pasveer
録音:1993年
KOMET als KLAVIERSTÜCK XVII(1994/99)
for electronic piano, tape and sound projectionist
シンセサイザー:Antonio Pérez Abellán
録音:2000年
ENTFÜHRUNG(1086) for piccolo flute
ピッコロ:Kathinka Pasveer
録音:1993年
FLÖTE(1995/96) for flute and electronic music
フルート:Kathinka Pasveer
録音:1996年
THINKI(1997) for flute
フルート:Kathinka Pasveer
録音:2000年
『光の月曜日』『光の水曜日』『光の金曜日』 『光の土曜日』からの派生作品集。
CD58 LICHTER-WASSER
LICHTER-WASSER(1998-1999) for soprano, tenor and orchestra with synthesizer
演奏:
ソプラノ:Barbara van den Boom
テノール:Hubert Mayer
シンセサイザー:Antonio Pérez Abellán
南西ドイツ放送交響楽団
指揮:Karlheinz Stockhausen
録音:1999年(オーケストラ部分)、2000年(歌手、シンセサイザー部分)
「日曜日」第1場面。
客席にちりばめられたオーケストラが、ミヒャエルとエーファのフォーミュラを、2声の「空間をうごめく音色旋律」で演奏していく様が非常に美しい。
CD59 右眉毛の踊り、カプリコーン
RECHTER AUGENBRAUENTANZ(1983/2003)
for 6 clarinets, 2 bass clarinets,
percussionist, synthesizer player
演奏:
クラリネット:Rumi Sota-Klemm, Antonia Lorenz, Michele Marelli,
Roberta Gottardi, Maja Pawelke, Jean-François Charles
バス・クラリネット:Petra Stump, Heinz-Peter Linshalm
シンセサイザー:Antonio Pérez Aellán 打楽器:Michael Pattman
指揮:Adrian Heger
音楽監督:Karlheinz Stockhausen
CAPRICORN(1977) for bass and electronic music
バス:Nicholas Isherwood
録音:2003年
RECHTER AUGENBRAUENTANZ(右眉毛の踊り)は「土曜日」第3幕「ルツィファーの踊り」をクラリネット・アンサンブルのために抜粋、再構成した作品。打楽器ソロの活躍する「鼻翼の踊り」、超絶トランペット独奏が印象的な「上唇の踊り」の部分はカットされているが、それ以外の長大な「ルツィファーの踊り」のすべての部分を含んだ演奏時間約35分の大作である。3群に分かれたクラリネット・アンサンブルが3声のフォーミュラの断片を複雑に変形させながらせわしなく繰り返す構造になっているが、この変幻自在のポリフォニーは、背景で鳴り続けるシンセの和音、金属系の打楽器とさらに組み合わせられ邪教的な雰囲気を醸し出し出す。クラリネットが随所で発する気息音やキス・ノイズも面白い。
原曲ではピッコロ独奏が華やかに活躍する「舌先の踊り」はここではEs管クラリネット独奏に置き換えられているが、その演奏の素晴らしさも相まって非常に高い効果を上げている。
CAPRICORNは「シリウス」の一部をバス独唱と電子音楽のために再構成した作品で、「カプリコーン」の部分から「シリウス」全体のコーダにあたる「宣告」までを含む30分弱のヴァージョンにまとめられている。
ここでバス・パートを歌うニコラス・イシャーウッドはすべての音符を克明に描き出し、極端なまでに強調された子音の響きは電子音のように感じられる。いきなり冒頭にあらわれる超重低音の電子音で奏でられるメロディーと対等に張り合うニコラス・イシャーウッドの強靱な歌声の「対決」も聞き物である。
関連作品:
・「光の土曜日」CD34
・「舌先の踊り」CD57
・「シリウス」CD26