シュトックハウゼンCDガイド 20-29

CD20 私は空を散歩する…

Am Himmel wandre ich…(1972)
American Indian songs for 2 voices

メゾ・ソプラノ:Helga Hamm-Albrecht
テノール:Karl O. Barkey

アメリカ・インディアンの12の詩に曲を付けたもの。
一音のみ使用する第1曲から、12音すべてを使用する最終曲まで使用する音が1つずつ増えていく仕掛けになっている。
二人の歌手は歌いながら様々な演技を行うことも要求される。


 

CD21 YLEM

YLEM(1972) for 19 players

ロンドン・シンフォニエッタ
音楽監督:Karlheinz Stockhausen

録音:1973年

テキストで音楽の展開が指示された作品。ビッグ・バン、宇宙の膨張や収縮などが音楽的に表現されている。
2種類の演奏が収録されている。


 

CD22 祈り

INORI(1973-74)
Adoration for 1 or 2 soloists and orchestra

南西ドイツ放送交響楽団
指揮:Karlheinz Stockhausen

録音:1978年


 

CD 23 呼吸は生命を与える

ATMEN GIBT DAS LEBEN(1974/77) Choral Opera with orchestra (or tape)

演奏:北ドイツ放送合唱団
(テープ上のオーケストラ:北ドイツ放送交響楽団、録音1977年)
音楽監督:Karlheinz Stockhausen

録音:1979年


 

CD 24 十二宮、おなかの音楽

TIERKREIS(1975) for 12 music boxes
MUSIK IM BAUCH(1975) for six percussionists and music boxes

演奏:Les Percussions de Strasbourg
録音:1977年

TIERKREIS(十二宮)は12の星座を12のメロディーで表した作品で、もともとはオルゴール用に作曲された。12の星座の下に生まれた人々の性格の違いをメロディーの性格の違いで表そうと試みているが、星座ごとに異なる中心音(12音の半音階を星座ごとに上行する)、異なるテンポ(12のテンポの半音階が使用される)を持ち、さらにそれぞれのメロディーが異なる12音のセリーをもとに形成されている。その結果は一見親しみやすいものであるが、メロディーの構造を詳細に分析すると、シュトックハウゼンの高度な作曲技法をかいま見ることが出来る。
様々な声、楽器の組み合わせによる版が存在するが、ここではオリジナルのオルゴールによる演奏が収められている。

「おなかの音楽 MUSIK IM BAUCH」はこのTIERKREISのメロディーを使用した派生作品。
演奏者は3つのメロディーを選び、様々なテンポでこの3つのメロディーを同時に演奏するが、残響のあまり残らない打楽器の音で極めてゆっくりなテンポで演奏するため、メロディーの全体像をそこから聴き分けることは(不可能ではないが)容易ではない。しかし、一見点描的に聞こえる音響に隠れた、メロディーとしての連関を聴き取れるようになると、この作品の面白さを存分に味わうことができるようになるだろう。
作品の後半で、舞台中央に吊り下げられた「鳥人間」ミロンの人形(これはシュトックハウゼン本人の象徴でもある)の腹部から演奏者が3つのオルゴールを取り出し、演奏することによってこの3つのメロディーが本来のテンポで演奏され「種明かし」となる。
ちなみにこの作品のアイデアは、シュトックハウゼンと彼の娘の他愛もない親子の会話から着想された。

関連録音:
CD32:TIERKREIS(クラリネットとピアノによる版)
CD35:TIERKREIS(トランペット、フルート、クラリネットによる三重奏版)
CD77:TIERKREIS(テノールとシンセサイザーによる版)
CD100:TIERKREIS(オーケストラ版)
CD26:SIRIUS(4人の演奏者と電子音楽による、TIERKREISの長大な派生作品)


 

CD25 ハルレキン、小ハルレキン

HARLEKIN(1975) for clarinet
DER KLEINE HARLEKIN(1975) for clarinet

クラリネット:Suzanne Stephens
録音:1978年

「ハルレキン」はピエロ風の扮装をしたクラリネット奏者が、舞台中を軽やかにコミカルに動き回りながら超絶技巧的なパッセージを延々と吹き続ける45分あまりの超大作。作品全体が一種の螺線を描くように構成されているが、作品の細部においてもこれに対応した素早く駆け上がったり駆け降りたりする急速なアルペッジョの繰り返しが多く見られ、しばしばこうしたパッセージがくるくる回転しながら演奏するしぐさと組み合わせられる。
演奏者には、単に技巧的に演奏するだけでなく、むしろ演奏の大変さを感じさせないチャーミングな雰囲気、ユーモラスな演技力なども要求され(その前提としてこの長大なスコアを暗譜しなくてはならない)、「表現者」としての総合的な能力を必要とする作品といえる。

「小ハルレキン」はしばしば「ハルレキン」の抜粋版と誤解されることが多いが、もともと「ハルレキン」の一つのセクションとして構想されていた部分(実際の作品には含まれていない)を独立した作品として仕立てたものである。クラリネットを演奏しながら足踏みによるリズムを付け加えるところに特徴がある。


 

CD26 シリウス

SIRIUS(1975-77)
electronic music
and trumpet, soprano, bass clarinet, bass

トランペット;Markus Stockhausen
ソプラノ:Annette Meriweather
バス・クラリネット:Suzanne Stephens
バス:Boris Carmeli
音楽監督:Karlheinz Stockhausen

録音:1979年

関連録音:
・「シリウス」のための電子音楽CD76


 

CD27 友情に、夢のフォルメル、アムール

IN FREUNDSCHAFT(1977) for clarinet

録音:1979年

TRAUM-FORMEL(1981) for basset-horn

録音:1983年

AMOUR(1976) for clarinet

録音:1980年

クラリネット、バセットホルン:Suzanne Stephens

このCDはシュトックハウゼンのクラリネット作品を長年演奏し続けているスザンヌ・スティーヴンスの演奏によるクラリネット作品集であり、特にこのアルバムではシュトックハウゼンのクラリネット作品の「スタンダード」とでもいうべき定番曲が収められている。

「友情に IN FREUNDSCHAFT」は今や管楽器のコンクールの課題曲に選ばれるほど演奏頻度の高い作品で、様々な独奏楽器のための版も作られているが、オリジナルはこのクラリネット版である。
高音域、中音域、低音域に分けられた3つの層による疑似対位法による作品であるが、音程、リズム、音価のすべての面で正反対の性格を持つ(しかし同一の素材を起源とする)高音域と低音域のメロディーが、中音域で同じ音で繰り返されるトリルを仲立ちとして、素材を少しずつ交替しながら中音域へと歩み寄っていく構成を持つ。

「夢のフォルメル TRAUM-FORMEL」は「土曜日」第1場「ルツィファーの夢」の基本構造となる5層のフォルメルを疑似対位法で演奏する作品であるが、「友情に」よりもはるかに頻繁な音域の跳躍を伴う至難なテクニックを演奏者に要求すると同時に、聴衆にもこの複雑な対位法を把握するための集中的な聴取を要求する。しかしながら、バセットホルンの官能的な音色の特性をうまく生かした作品で、単なる超絶技巧の作品とは一線を画している。

「AMOUR(愛)」はクラリネットのための5つの小品集で、それぞれの作品はシュトックハウゼンの始めの結婚相手のドリス、二回目の結婚相手マリー・バウアマイスター、そしてこの作品の初演者であり実質的に3番目の妻である(籍は入れていない)スザンヌ・スティーヴンスなど、彼の愛した女性たちに捧げられている。
このような作曲事情も反映して、「前衛音楽の旗手」として知られるシュトックハウゼンのイメージからは程遠いチャーミングな作品ばかりで構成される。
どの作品でもメロディーによる作曲の様々な側面が追求されているが、「蝶が遊んでいる」での素早い跳躍音程の連続や、「4つの星があなたの道しるべとなる」での4音のモチーフのミニマル音楽を思わせるゆっくりとした変容を伴う繰り返しなど、気楽な小品集に留まらない創意に満ちている。

関連録音:
CD29:「友情に」、「アムール」フルート版
CD32:「友情に」バセットホルン版
CD44:「友情に」トロンボーン版
CD60:「友情に」トランペット版
CD78:「友情に」、「アムール」サクソフォン版


 

CD28 フルート作品集

IN FREUNDSCHAFT(1977) for flute
AMOUR(1976/81) for flute
SUSANIs ECHO(1985) for alto flute
Xi(1986) for flute
ZUNGENSPITZENTANZ(1983) for piccolo flute
FLAUTINA(1989) for flute with piccolo flute and alto flute

録音:1989年

KATHINKAs GESANG(1983) for flute and electronic music

録音:1985年

PICCOLO(1977) for piccolo flute
YPSILON(1989) for flute

録音:1991年

フルート:Kathinka Pasveer

2枚組


 

CD29 歴年

DER JAHRESLAUF(1977) for orchestra and tape

ハーモニウム:Wilhelm Neuhaus, Günter Hempel, Harald Hoeren
アンヴィル:David Gray
ピッコロ:Kurt Nitschke, Hans-Martin Müller, Josef Heck
ボンゴ:Martin Schulz
ソプラノ・サクソフォン:Hugo Read, Gerhard Veek, Norbert Stein
大太鼓:Christoph Caskel
チェンバロ:Annemarie Bohne
ギター:Theodor Ross

録音:1979年

日本で世界初演された雅楽のための作品の、西洋楽器による版。