CD10 ヒュムネン
HYMNEN(1966-67) Electronic and Concrete Music
HYMNEN Electronic and Concrete Music with Soloists
ピアノ:Aloys Kontarsky
タムタム:Alfred Alings, Rolf Gehlhaar
電子ヴィオラ:Johannes G. Fritsch
エレクトロニウム:Harald Bojé
フィルター、ポテンショメーター:Karlheinz Stockhausen
録音:1969年
シュトックハウゼンの電子音楽作曲の1つの頂点を示す2時間に及ぶ大作。
電子音楽のみの版と、ソロイスツが音楽的注釈をつけるソロイスツ付版の2つのヴァージョンを収録。
4枚組。
関連録音:
CD47「ヒュムネン」オーケストラ付き版
CD11 プロツェシオン、セイロン
PROZESSION(1967)
for tam-tam, electrochord, electronium, piano, filters and potentiometers
タムタム:Christoph Caskel, Joachim Krist
エレクトロコード:Péter Eötvös
エレクトロニウム:Harald Bojé
ピアノ:Aloys Kontarsky
フィルター、ポテンショメーター:Karlheinz Stockhausen
録音:1971年
CEYLON(1970) for small ensemble
エレクトロニウム:Harald Bojé
打楽器、シンセサイザー:Péter Eötvös
変調されたピアノ:Aloys Kontarsky
タムタム:Joachim Krist
キャンディ・ドラム:Karlheinz Stockhausen
録音:1975年
PROZESSIONはシュトックハウゼンの作曲活動の一つの転機に当たる重要な作品である。1960年に完成した「カレ」以降、完全に固定されたスコアによる作曲から遠ざかり、演奏による多義性、不確定性を追求していたが、それらは基本的に、演奏者が予め自分の演奏用のスコアをリアライズするという形で行われていた。しかしこの作品では、タイトルの由来にもなった素材の変容の「プロセス」のみが作曲され、演奏者は一種の即興演奏のような形でこれをリアライズする。素材は、シュトックハウゼンの過去の作品の一部が記憶に基づき引用されたものであり、細部は演奏者に委ねられている。この素材をどのように変容していくかは、+や-などの特別な記号によって指定され、音域、強度、持続、素材の分割法のいくつか、または全てが変容される。続くイヴェントの素材はここで演奏された音楽イヴェント、または他の演奏者によるイヴェントから取られるので、シュトックハウゼンの過去の作品の引用が、フィードバックを含む様々な経路で全く新しい音楽へとどんどん変形されていくことになり、その集積が(低質な即興演奏にありがちな、まとまりのなさとは対極の)「作品」としての構造感を生み出すことになる。
このような、即興演奏のプロセスを+や-などの記号で記譜する作曲方法はこの作品を皮切りにKURZWELLEN、SPIRALなどでも踏襲されるが、彼と緊密で継続的なコラボレーションを行っている演奏者による演奏を前提として作曲され、口述による演奏指示も重要な要素になっていく。こうした方向性はテキストによる演奏指示のみによる「直観音楽」へ到達することになる。
CEYLONは2作目の直観音楽集「来たるべき時のために」の中の一曲。完全にテキストのみによる1作目の直観音楽集の「7つの日より」に対して、この曲集では五線紙による伝統的な記譜法を使った作品も含まれ、このCEYLONはそうした傾向のものの一つである。この作品ではキャンディ・ドラムで演奏されるリズムが2ページに渡って詳細に記譜されているが、アンサンブルでの具体的な演奏方法は明示されていない。
この録音では、このリズムを7回繰り返し、それに注釈をつける楽器の種類、テンポなどの演奏計画を予め決め、それに基づいて実際の演奏が行われた。
ガムラン音楽そのものにかなり近い音響と、シュトックハウゼンらしい電子音響が不可思議なバランス感覚で融合した無国籍なサウンドは、シュトックハウゼンの全作品の中でも際立って特異である。
関連録音:CD17.1「来たるべき時のために」
CD12 シュティムング
STIMMUNG(1968) for 6 vocalists
演奏:Collegium Vocale Köln
サウンド・プロジェクション:Karlheinz Stockhausen
録音:1969年、1982年
倍音唱法による音色変化に着目した作品。
同じ演奏者による時期の異なる2種類の演奏が収録されている。2枚組。
CD13 短波
KURZWELLEN(1968) for 6 players
ピアノ:Aloys Kontarsky
エレクトロニウム:Harald Bojé
タムタム:Alfred Alings, Rolf Gehlhaar
電子ヴィオラ:Johannes G. Fritsch
フィルター、ポテンショメーター:Karlheinz Stockhausen
録音:1969年
この作品の前年に作曲されたPROZESSIONでは、シュトックハウゼンの過去の作品からの断片を素材として、+や-の記号による特殊な楽譜によって即興的にそれを変容させていく「プロセス」に目を向けた作品であったが、この作品ではその素材が各奏者が楽器とともに使用する短波ラジオで受信した音響に置き換わる。
短波ラジオは世界中から発信される具体音からノイズに至る多様な音響を含むが、この多様な音響が生演奏によって変容されることにより、具体音から抽象的な音響までの領域が様々なレベルで結び合わされる。
作曲家との緊密、かつ継続的なコラボレーションを経た、演奏の高い完成度も必聴である。
関連録音:
CD61「短波」世界初演ライヴ録音
CD14 7つの日より
AUS DEN SIEBEN TAGEN(1968)
・RICHTIGE DAUERN(正しい持続)
・UNBEGRENZT(無際限)
・VERBINDUNG(結合)
・TREFFPUNKT(合流点) – 2 versions
・NACHTMUSIK(夜の音楽)
・ABWÄRTS(下方へ) – 2 versions
・AUFWÄRTS(上方へ)
・INTENSITÄT(強度)
・SETZ DIE SEGEL ZUR SONNE(太陽に向かって帆を上げよ)
・KOMMUNION(聖体拝領)
・ES(それ) – 2 versions
演奏:
Carlos R. Alsina, Jean-François Jenny-Clark, Jean-Pierre Drouet, Michel Portal,
Vinko Globokar, Harald Bojé, Aloys Kontarsky, Johannes G. Fritsch,
Alfred Alings, Rolf Gehlhaar, Karlheinz Stockhausen
録音:1969年
・GOLDSTAUB(金粉)
演奏:
Peter Eötvös, Herbert Henk, Michael Vetter, Karlheinz Stockhausen
録音:1972年(シュトックハウゼン邸での演奏)
テキストの詩的な演奏指示のみによる直観音楽の代表作。7枚組。
CD15 シュピラール、ポーレ
SPIRAL(1968) for a soloist(2種類の演奏)
演奏:
(第1ヴァージョン)Péter Eötvös
(第2ヴァージョン)Harald Bojé
POLE(1970) for 2
演奏:Péter Eötvös, Harald Bojé
録音:1971年
両作品とも短波ラジオで受信した音響から演奏イヴェントを決定し、+, -, =などによるこの時期におなじみの特殊な楽譜に基づいて変容させていく作品。当然ながら、演奏ごとに演奏結果は毎回異なるのでSPIRALでは二人の演奏者による異なるヴァージョンが併録されている。
両者ともエレクトロコード、エレクトロニウムといった現在のシンセサイザーに当たる電子楽器を使用し、時代の空気を感じさせるワイルドな電子音の響きが鮮烈な印象を与える。
今や大物指揮者になったエトヴェシュによる若き日の電子楽器の演奏も今となっては貴重な記録である。
この録音の前年の1970年、大阪万博のドイツ館において、シュトックハウゼンは彼の当時の共演者達とともに、ここに収められた作品も含む多くの自作を半年間に渡って毎日演奏し続けたが、ここで演奏している両演奏者はそのメンバーでもあり、シュトックハウゼンとの濃厚なコラボレーションの成果をここで確認することが出来る。
意外に見過ごされがちであるが、ラジオのサウンドと演奏されたサウンドの重なり合いに注意を向けて聴くことも、より深い作品理解に重要であろう。
関連録音:
CD45:シュピラール(オーボエによる演奏)
CD46:シュピラール(声による演奏、全曲演奏)
CD103:ポーレ(ミヒャエル・フェッター他による新録音。全曲演奏)
CD16 マントラ
MANTRA(1970) for 2 pianists
ピアノ:Aloys Kontarsky, Alfons Kontarsky
録音: 1971年
「フォルメル技法」を用いたはじめての作品。
ピアノの音はリング変調され、ピアニストはアコースティック・シンバル、ウッド・ブロック、短波ラジオなどの補助楽器も使用する。
CD17.1 来たるべき時のために
FÜR KOMMENDE ZEITEN(1968-1970)
・VERKÜRZUNG(縮小)
・WACH(目覚め)
・ANHALT
・VORAHNUNG
・INNERHALB
・WELLEN(波)
演奏:ヴァイマール直感音楽アンサンブル
ピアノ、ハーモニウム:Michael von Hintzenstern
チェロ:Matthias von Hintzenstern
トランペット:Daniel Hoffman、シンセサイザー:Hans Tutschku
サウンド・プロジェクション:Karlheinz Stockhausen
録音:2005年
「7つの日より」に続く2作目の直感音楽作品集。続編が発売されるのかどうかは不明。
関連録音:
CD11:セイロン
CD18 「星の響き」
STERNKLANG(1971) Park Music for 5 Groups
演奏:
グループ I :
Peter Britton, Tim Souster, Robin Thompson, Roger Smalley
グループ II:
Annette Meriweather, Wolfgang König, Hans-Alderich Billig, Harald Bojé
グループ III:
Helga Hamm-Albrecht, Wolfgang Fromme, Helmut Clemens, Peter Sommer
グループ IV:
Stuart Jones, Hugh Davies, Graham Hearn, Michael Robinson
グループV:
Markus Stockhausen, Suzanne Stephens, Atsuko Iwami, Michael Vetter
打楽器:Richard Bernas
録音:1975年
公演のような屋外の広い場所にできるだけ離れて配置された5群のアンサンブルによる作品。
STIMMUNGのように倍音列に基づく純正律の音程のみが使用されるが、単一の基音上の倍音列のみを使用したSTIMMUNGに対してこの作品では5つの基音が使用され、5つのグループ間でこれらの基音が重層的に使用される。また、STIMMUNGでは声楽アンサンブルの母音変化のみで倍音列のコントロールが行われていたが、この作品では声の倍音変化に加えてシンセサイザーのフィルター操作などによる器楽での倍音変化も加えられ、様々な側面でSTIMMUNGのアイデアを拡大した作品と見なすことが出来る。
演奏の素材として、星座の名前を倍音による音色変化のリズムパターンに置き換えたものや星座の配置自体を一種の図形楽譜のように読み替えたものなどが使用され、天空の星の輝きと倍音列の虹のようなきらめきが音楽的に結びつけられる。
CD19 「トランス」
TRANS(1971) for orchestra
演奏(世界初演):
南西ドイツ放送交響楽団
指揮:Ernst Bour
サウンド・プロジェクション:Karlheinz Stockhausen
録音:1971年(ライヴ録音)
演奏(スタジオ録音):
ザールラント放送管弦楽団
指揮:Hans Zender
サウンド・プロジェクション:Karlheinz Stockhausen
録音:1974年
世界初演のライヴ録音とスタジオ録音の2種類の演奏を収録。
特に観客の「ホットな」反応も生々しく収められた世界初演の模様は絶品。