『ワルシャワの生き残り』の作曲時、高齢となっていたシェーンベルクの視力がかなり低下していたため、シェーンベルクが大きめの五線紙に書いたシェーンベルクの略式スコアをもとにレイホヴィッツがオーケストラ・スコアに転記する形で清書譜が作成された。出版譜はこの清書譜をもとに作成されている。
出版譜のスコア77小節目のヴィオラ・パートには不可解な部分がある。この少し前からヴィオラ・パートは2声部に分かれ、終始同一のリズムで和音を刻んでいるのだが、1箇所だけ両者のリズムが異なっている部分があるのだ。以下の画像は、レイホヴィッツの筆写譜(出版譜も同じ内容)。3拍目のリズムのずれはかなり不自然だ。
そして、同一部分のシェーンベルクの自筆譜。
1拍目および2拍目の両声部の音符がぴったりとくっついているのに対し、4拍目では両者が微妙にずれていることが分かるだろう。
つまり上声部が3連符ではなく2連符であるはずだ。したがって、シェーンベルクが意図したのは以下のような楽譜と思われる。
これなら、両者のリズムがここだけ相違している意図も納得できるものとなる。