モーツァルト『ピアノ・ソナタ』KV545第1楽章のちょっとした仕掛け

初心者用のピアノ曲として有名なモーツァルトのKV545の第1楽章、2つのテーマは対照的なキャラクターを持ちながら、実は同じ素材からできています。

第1主題(ハ長調)は、上行する長三和音の分散和音、導音から主音という構成、第2主題(ト長調)は下行する長三和音の分散和音、主音から導音という鏡写しのような関係です(譜例1)。

譜例1

しかも冒頭の3音のリズムも、第1主題は「長-短-短」、第2主題は「短-短−長」と裏返しの関係、第2主題でリズムが1/2に圧縮されているところも興味深いです。

そして、第1主題と第2主題のつなぎの部分に出てくるスケールの音形、よく楽譜を見てみると、これは3〜4小節目のメロディーに由来していますね。メロディーのアウトラインだけを抜き出すとA-G-F-E。
スケールのフレーズの骨格も同じA-G-F-Eで、こちらは音価が2倍に拡大されています(譜例2)。

譜例2