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MOMENTE(1962-64/69)
   for solo soprano, 4 choir groups and 13 instrumentalists

演奏:
ソプラノ独唱:Angela Tunstall
西ドイツ放送合唱団
電子オルガン:Antonio Pérez Abellán, Massimiliano Viel
器楽アンサンブル:MusikFabrik
指揮:Rupert Huber
サウンド・プロジェクション:Karlheinz Stockhausen
(本録音に先立つリハーサル、演奏会のみ参加。本録音、ミキシングにはシュトックハウゼンは関わっていない)

録音:1998年

今回の1998年版は、以前から発売されているヨーロッパ版と演奏順序がやや異なっていますが、それ以上に印象の異なる場所がかなりあります。
まず前回の録音から25年以上たっての新録音なので、前回の録音では完全に収めきれなかった細かい音響までクリアーに捉えられ全体的に立体的な感触が増しているので、この作品自体に対する印象がかなり変わりました。特にI(k)モメントは旧録音と比べて演奏、録音とも洗練され、今まで正直言ってあまり良さが分からなかったこの部分の魅力が分かり始めてきました。

ハモンド・オルガンのパートはシンセサイザーに置き換えられていますが、基本的にオルガン的な音色を模倣しているものの、そこから逸脱した音色が出てくる部分もあり興味深いです。「水曜日」の「世界議会」での素晴らしい合唱指揮が印象的だったRupert Huberが指揮していることにより、この「モメンテ」で極めて重要なパートであるコーラス部分のまとまりも素晴らしいです。
一番大きい違いはソプラノ・ソロでしょう。旧録音でのGloria Davyによるやや無骨な印象も受けるソロと比べてAngela Tunstallの演奏は軽やかでこの演奏の素晴らしさを際立たせるのに大きく貢献しています。

関連録音:「モメンテ」(ヨーロッパ版全曲、ドナウエッシンゲン版抜粋)CD7

PUNKTE(1952/1962、最終的な改訂1993) for orchestra

演奏:
ケルン西ドイツ放送交響楽団
指揮:Péter Eötvös
サウンド・プロジェクション:Karlheinz Stockhausen
録音:2004年(ライヴ)

「プンクテ」(=点)というタイトルがいかにも戦後のセリー主義を象徴しているようであるし、1952年に作曲されたこの作品の初稿も当時の「はやり」であった点描的なものであったようだ。この10年後の1962年に改訂された際、この作品全体を構成していた「点」そのものにメスが入れられることとなる。「点」は広がって小さな塊になったり、逆に小さな塊が点へと集束する、あるいは、その「点」が震えたり(トリル)、上下に動いたり(グリッサンド、半音階のメロディーなど)と、「点的状態」が細かく変容する構造へと大規模に改訂される。その他、初稿に頻出した長い休止部分に新たな楽想を挿入したり、多層的な音響構造のある部分に「穴」を空けて切り絵のような効果を出したりと、改訂というよりは再作曲といっていい程に書き直されるが、この版は1963年のブーレーズ指揮によって初演される(注)。
その後もこの曲にさらなる改訂が加えられ1975年に作曲者の指揮による演奏が録音されたが(全集CD2に収録)、この段階で1962年版からかなり手が加えられたことが聴いて判断できる。その後も細かく改訂が施され、最終的には1994年に決定稿が出版されるが、本CDにはその最新版に基づく作曲者立ち合いによる演奏のライヴ録音が収録されている。

ここで聴ける音楽は新進作曲家の不十分な仕上がりの作品ではなく、円熟した作曲家による十分な時間をかけて熟成された充実した名作である。
様々な逸脱があるにしてもこの作品の基本要素は依然として「点」であるので、そのひとつひとつの点のカラーが非常に重要な要素となるが、緻密を極めるオーケストレーションはもちろん演奏、録音の優秀さも相まって、この名作の素晴らしさを十分に堪能することができる。

この作品の演奏時間は26分あまりであり、本CDにはこの作品のみが収録されているが、余白には、この録音が行われた演奏会でのシュトックハウゼンのMC(ドイツ語、後日英語訳を作りスタジオで録音されたものも併録されている)も収められている。
純粋な音楽の分量としては非常に短いCDであるが、「プンクテ」の濃密な音楽内容を考えれば非常に価値の高いアルバムであると言えるだろう。


注)この時の録音(モノラル)は「75 Jahre Donaueschinger Musigtage 1921-1996」というCDセットに収録されている。

関連録音:「プンクテ」(1975年録音)CD2

収録曲:

・QUITT(1989) for alto flute, clarinet, piccolo trumpet
   アルト・フルート:Kathinka Pasveer
   クラリネット:Suzanne Stephens
   ピッコロ・トランペット:Marco Blaauw
   録音:2005年

・BASSETTSU(1997) for basset-horn
   バセットホルン:Suzanne Stephens
   録音:2005年

・KOMET(1994/99) version for a percussionist and tape
   打楽器:Stuart Gerber
   録音:2005年

・TRUMPETENT(1995) for 4 trumpeters
   トランペット:Markus Stockhausen, Achim Gorsch,
          Andreas Adam, Marco Blaauw
   録音:1995年

・MICHAELs RUF(1978/94) version for 4 trumpets
   トランペット:Markus Stockhausen, Achim Gorsch,
          Andreas Adam, Marco Blaauw
   録音:1997年

・SYNTHI-FOU(1991) for synthesizer and electronic music
   シンセサイザー:Antonio Pérez Abellán
   録音:2004年

このアルバムはこれまで未発表であった様々なLICHTの派生作品や、既発作品の別ヴァージョンが収められているが、落ち葉拾い的な消極的な内容に留まらない、秀逸な作品、演奏が揃っている。

QUITTは3色のペンでグラフ上に書かれたドローイング(本CDのジャケットになっている)を基にした作品。3つの楽器の微分音の唸りなどをオン・マイクで捉えた強烈な音響効果が興味深い。
BASSETSUは「水曜日」最終場面MICHAELIONからの派生作品。
MICHAELs RUFは「木曜日の迎え」の一部を4本のトランペットのために編曲したファンファーレ風の短い作品。
TRUMPETENTは4人のトランペット奏者が演奏しながら客席の様々な場所を動き回り、最終的に舞台に設置されたテントへ移動する作品。

KOMETとSYNTHI-FOUは既発のものとは別の演奏者による別のヴァージョン。演奏者に楽器や音色を選択する自由があるので比較してみるのも面白い。

関連録音:
CD42 SYNTHI-FOU(Simon Stockhausenによる版)
CD57 KOMET(Antonio Pérez Abellánによるシンセによる版)
CD79 KOMET(Andreas Boettgerによる版)

HIMMELFAHRT(2004/2005) Version for synthesizer, soprano and tenor

シンセサイザー:Antonio Pérez Abellan
ソプラノ:Barbara Zanichelli
テノール:Hubert Mayer
サウンド・プロジェクション:Karlheinz Stockhausen

録音:2006年

本来はオルガン、ソプラノ、テノールのための作品であるが、オルガン・パートはシンセサイザーで代用可であり、ここではシンセサイザーによる版が収録されている。
シンセ奏者は終始、2つの異なるテンポを左右の手で弾き分けなくてはならず、24個に分かれた小部分でそれぞれのテンポが変化し、それぞれの音色もそれに応じて変化させなくてはならない。
また、シンセ奏者はシンセサイザーを演奏しながらリンなどの補助的な打楽器も演奏する。
ソプラノ、テノールは基本的に脇役的な役回りで、時折オルガン曲の定旋律のように短いフレーズを歌う。

付録として、シンセサイザーの右手パートのための24の音色、左手パートのための20の音色のサンプル演奏が収録されている。

FREUDE(2005) for 2 harps

ハープ:Marianne Smit, Esther Kooi
サウンド・プロジェクション:Karlheinz Stockhausen

録音:2006年

これまでのシュトックハウゼン作品と比べると極めて異例な楽器編成である、2台ハープのための作品。
アルペッジョ、グリッサンド、トレモロなどハープの正統的かつ王道的な奏法を中心に使って作曲しつつ、今までに聴いたこともないような神秘的な美しさを湛えた作品に仕上がっている。
2台のハープが同時にグリッサンドを繰り返す時、弦の音色が左右に広がるような録音の美しさも特筆すべきである。

二人のハーピストはハープを演奏しながら「Veni Creator Spiritus 来たれ聖霊よ」のテキストを歌う。
この24行のテキストは作品の24の部分に対応している。

NATÜRLICHE DAUERN for piano
ピアノ:Frank Gutschmidt, Benjamin Kobler, Antonio Pérez Abellán

HIMMELS-TÜR(2005) for a percussionist and a little girl
24 TÜRIN(2006) for door, rin and speaker

打楽器奏者:Stuart Gerber
サウンド・プロジェクション、TÜRINのリアリゼーション:Karlheinz Stockhausen
録音:2006年

「HIMMELS-TÜR 天国への扉」は打楽器奏者が舞台中央に設置された木で出来たドアを数種類のバチで様々な方法で叩き続けるパフォーマンス的な要素の強い作品。
曲の後半でこのドアが開き、打楽器奏者はドアの反対側へ歩いていく。しばらくするとドラやシンバルの長い残響が混じり合う音楽が始まり、サイレンが鳴り始め舞台客席にいた少女がドアのところに歩いて行き、彼女もドアの向こう側へ消えて行く。

この作品のために特別に作られたドアは左右とも6種類の素材から出来ていて、叩く場所を変えると音色が変わる仕掛になっている。奏者の靴音なども交え、限られた音素材から多くの音色を弾き出すアイデアははるか以前に作曲された「ミクロフォニーI」を思い出させるが、その作品とは違い、ここでは電子的な変調は一切行われていない。

CDではパフォーマンス的な視覚要素は当然排除されるのであるが、聴覚に集中出来る分、むしろ実演に接するよりも微細な音響の変化に注意を向けることができる。

TÜRINはTür(=ドア)とRin(=仏具のお鈴)を組み合わせた造語。HIMMELS-TÜRのためのドアを叩く音をサンプリングし、音高を変え、さらに同じピッチのリンの音を組み合わせたサウンドでKLANGの基礎となる24音のセリーを極めてゆっくりと演奏する作品。
これらのサウンドは特殊なリヴァーヴのセッティングにより、残響音が凍りついたように極端に長く伸びるようなエフェクトが施され、この超現実的な残響音が重なっていく過程も興味深い。
また、それぞれのサウンドの途中でシュトックハウゼンが24の「高貴な単語」を淡々と語っていく。