・VIBRA-ELUFA(2003) for vibraphone
ヴィブラフォン:Michael Pattmann
・KOMET(1994/1999)
Version for a percussionist, electronic and concrete music, sound projectionist
打楽器:Andreas Boettger
・NASENFLÜGELTANZ(1983/1988) for a percussionist and a synthesizer player
打楽器:Stuart Gerber、シンセサイザー:Antonio Pérez Abellán
・KLAVIERSTÜCK XVIII (MITTWOCH-FORMEL)(2004) for electronic piano
シンセサイザー:Antonio Pérez Abellán
・MITTWOCH-FORMEL(2004) with 3 percussionists (METAL – WOOD – SKIN)
打楽器:Michael Pattman, Oleg Dziewanowski, Stuart Gerber
サウンド・プロジェクション:Karlheinz Stockhausen
録音:2000年(Komet)、2005年(その他)
このアルバムは『光』の派生作品から、打楽器のための作品を中心に集められている。
打楽器は、シュトックハウゼンにとって電子音楽と同じように音色の玉手箱であるということが体感できるこのアルバムの面白さは、最近発売された彼のアルバムの中でも一二を争うと言っても良いだろう。
VIBRA-ELUFAは「金曜日」の中のフルートとバセットホルンの二重奏曲ELUFAをヴィブラフォン独奏のためにアレンジしたものである。管楽器の微分音による疑似グリッサンドの繊細な効果が、ヴィブラフォンのグリッサンドの共鳴の効果へと置き換えられた、地味ながら美しい作品である。
KOMETも「金曜日」からの派生作品であり、「子供の戦争」の別ヴァージョンである。
「子供の戦争」は重厚な電子音楽に少年合唱の生演奏が加わり、シンセサイザー奏者は一定の制約の中で自由に音楽的注釈を付ける事が求められている。ここで収録されているヴァージョンはそのシンセサイザーのパートを打楽器に置き換えたもので、同様に打楽器奏者が自分で演奏用ヴァージョンを作り出す事が求められる。ちなみにオリジナルの少年合唱のパートはカティンカ・パスフェーアによる超絶的な歌唱のマルチ・トラック・レコーディングで電子音楽と共にスピーカーから再生される。
打楽器とサンプラーを併用し、文字通りおもちゃ箱をひっくり返したように多彩でユーモラスな響きはシリアス一辺倒ではないシュトックハウゼンのもう一つの側面を象徴している。
NASENFLÜGELTANZ(鼻翼の踊り)は「土曜日」第3場面「ルツィファーの踊り」からの派生作品であり、激しくユーモラスなアクションをしながら「似非」ドラムセットを超絶的に演奏する打楽器奏者とシンセサイザーのためのエキサイティングな作品である。
種々の打楽器に加えてサンプラーなどの電子機器も使用し、ちょっとした歌唱パート(これが抱腹絶倒である)までもこなす打楽器奏者の名技も聞き物であるが、シンセサイザー重厚な和音が左右に頻繁に動き回る(サイケデリック・ロックも連想させる)思い切ったミキシングも面白い(ちなみにこの空間移動は原曲のオーケストラ配置に対応している)。
KLAVIERSTÜCK XVIII(ピアノ曲XVIII)とMITTWOCH-FORMEL(水曜日のフォーミュラ)の二つの作品はどちらも実質的には同じ作品である(KOMETにシンセ版と打楽器版があってシンセ版の方に「ピアノ曲XVII」というタイトルを付けたのと同じ発想である)。
この2つの作品はどちらも「水曜日のフォーミュラ」を著しく引き伸ばして声部やテンポを変化させながら3度演奏するが、主に3声で構成されるこのフォーミュラを打楽器版では金属、木、皮の打楽器、シンセ版ではそれに対応する音色を、演奏者が自由に選ぶ。「光」のフォーミュラには通常のメロディーの間に様々なノイズ的音響が挿入されるが、そこをどのように解釈するかも演奏者の創造性の見せ所である。
シンセ版ではアントニオの洗練されたプログラミングによる美しい音色のハーモニーが非常に印象的だ。ピッチベンドを使用したグリッサンドの効果も面白い。
打楽器版はカラフルな音色の組み合わせや前述のノイズ的音響に対応する楽器、奏法の選択が興味深いが、クセナキス的なパワフルな演奏効果と対極にある静謐なアンサンブルの美しさが聞き所である。
サウンドの美しさがそれ自体だけでなく、フォーミュラという耳で聴き取れる構造に結びついている事も重要である。
ちなみに「水曜日」のフォーミュラは「光」のスーパー・フォーミュラそのものにかなり類似しているのでフォーミュラを聴き取る「練習曲」としても最適である。
関連作品:
「金曜日」CD50
「コメット - ピアノ曲XVII」CD57
「土曜日」CD34