CD45 ソロ、シュピラール

SOLO(1966) for a melody instrument with feedback(2種類の演奏)
  演奏:
   フルート版:Dietmar Wiesner
   シンセ版:Simon Stockhausen

SPIRAL(1968) for a soloist(オーボエ版)
   オーボエ、声、ディジュリドゥ:Cathy Milliken

録音:1995年

このアルバムでは、60年代の不確定なスコアによるソリストのための作品の1990年代の新しいリアリゼーションの録音がまとめられている。
SOLOは旋律楽器奏者の演奏する音に複雑なディレイ処理を行うことにより、一人の奏者による緊密なポリフォニーを作り出そうとする作品だが、その複雑なディレイ処理を行うために、初演時にはソリスト以外に4人のアシスタントを必要としたなど、その演奏に際しては大きな技術的な問題が立ちはだかっている。
この2種類の録音でも、リアルタイムでディレイ処理を行うのでなく、録音されたソリストのパートをシーケンサーやサンプラーを使ってテープ上で処理を行うことでスコアの要求を実現している。つまり、このヴァージョンをライヴで演奏するためには、あらかじめ録音されたテープと一緒にソリストが演奏する、という妥協した方法を取らざるを得なかったのだが、その後コンピュータ上(Max/MSP)でディレイ処理を行うことで、ライヴでも気軽に演奏できるようになった。
技術的な問題はさておき、ディレイを使った即興演奏にありがちな、ただ音を重ねて塗りつぶすような音響にしてしまう世界とは対極の、緻密なポリフォニーが大きく印象に残る。シンセ版では次々と音色を変化しながら演奏するためこのポリフォニーの効果はより効果的となる。
ちなみに、一人の旋律楽器奏者によるポリフォニーというアイデアは、1970年代以降の数多くの作品で、電子機材を使わずに幅広い音域の素早い交替(=ホケトゥス)を駆使することで実現され、新しい領域が発展させられることになる。

SPIRALは短波ラジオで受信した音響を、ソリストが模倣、変形していく作品であるが、このCDでのキャシー・ミリケンの演奏では、彼女の通常演奏するオーボエだけでなく、状況に応じて声やディジュリドゥも使用され、ディレイ、ハーモナイザーなどのエフェクターによる処理も行うことにより、音色に多彩さがもたらされるが、それが散漫さに陥ることなく彼女独特の柔らかい音色感で統一され、時にユーモアすら感じさせる。
演奏素材の変形の様子が手に取るように聴取できる演奏のクリアーさも大きな特徴である。

関連録音:
CD46:シュピラール(声のためのヴァージョン、完全版)
CD15:シュピラール(シンセのための版、2種)