今年のシュトックハウゼン講習会のコンポジション・セミナーのテーマであったKLANG2時間目「喜び」のアナリーゼの非常に大雑把な概略を以下にまとめます。
それ自体で詳細な分析を理解できるスケッチや譜例満載のテキストの残部やスコアそのものは購入可能ですので、興味のある方は実際に現物をご覧下さい。
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ミラノの大聖堂での聖霊降臨祭で演奏される作品を委嘱されたシュトックハウゼンは歌も歌う二人のハーピストのための作品の構想を思いつき、歌詞としてVeni Creator Spiritusを選ぶ。この歌詞は24行の歌詞をもっているので、それぞれの行をこの曲を構成する24のモメントに対照させ歌われるように考えた。
(24のモメントはKLANGの基本コンセプトである1日の24時間に対応)
まず始めに、この24のモメントの概略がスケッチされた。一枚の紙にそれぞれのモメントのテクスチュア(図形)、中心音、対応する歌詞が書き込まれているが、この1枚のスケッチが40分近くの作品全体を俯瞰したものになっている。
このスケッチは1時間ほどで一気に書き上げられたそうである。
1時間目でも使われた24音のセリーがこの曲でも使用されている。
この内の前半の12音を長三度下げたもの(セリーの始めは長三度下降だから)が、中心音として使用され、第1,第2モメントはc、第3,第4モメントはasというように2角モメントごとに同一の中心音が使用される。
リズム構造としては1時間目のためにスケッチされた膨大な「リズム・ファミリー」がそのまま流用されている。
各モメントをスケッチからリアライズする際に、そこで示されたテクスチュアを踏襲しながら24音セリーとこのリズム・ファミリーを組み合わせることにより、半ば自動的にピッチとリズムが決定されている。
もちろん音域、ポリフォニックな音の重なりなど、厳密に規定されていない面でシュトックハウゼンの創造性が発揮されていることは言うまでもないが(そしてこの部分の詳細な分析が本当は最も重要)、ここでも各種要素がセリエルに構想されている。
6音セリーの変形のみで構成された24音セリーの繰り返しによる単調さを回避するために、さまざまな手段でこのセリーが変形される。
6音のグループに分割されたセリーをそれぞれ逆行形にして並べ替えたり、基本形と反行形を様々な方法で組み合わせて何種類もの新しいセリーを生み出している。
(各モメントの中心音として規定された音から始まる移高形が用いられている)
半音を網羅するセリーを全音階的にチューニングされたハープで演奏することはペダルの頻繁な操作が大きな問題になる。
2台のハープで異なるチューニングを施すことによって半音階を網羅するように工夫されているが、この不自由なチューニングを逆手にとって、ハーモニーの多彩さを際立たせハープとしての自然な響きを利用し尽くす作曲の重要な要素としての利用もしている。
複数の和声が長時間続く場面では、各和音の最上声部のみがセリエルに規定され、下の声部はハーピストにとって演奏しやすい指使いを考慮して自由に規定されている。そうすると下の声部の構成音はその時のチューニングに規定され、同じ指使いでも状況によって微妙に和声が異なることになる。
グリッサンドを多用する箇所でもいくつかの「折り返し地点の音」のみがセリエルに規定され(当然構造をはっきりさせるためこれらの音はアクセントをつけるなどの強調が行われる)るので、その他の音はその時のチューニングに依存する。
セリエルな構造が、ペダリングの煩雑な変更を回避するために部分的に半音ゆがめられたり、という場所すら存在している。
「光」の時のように各部分がテンポの半音階で、厳密かつ複雑に規定する方法はここでは取らず、歌詞の雰囲気などから大まかなテンポが考えられ、リハーサルを通じてそれがメトロノーム記号に確定され(但し約60などの表記も多いです)、フェルマータの長さも同様に規定される。
リズムやフレーズの長さが規則的な持続構造にならないように常に配慮されている(セリーを使用する意図の一つはここにもある)ことはいつもと同じ。
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実際のレクチャーは作品の概略の説明の後、一日に始めから数個ずつのモメントを分析していく段取りで進められました。
スケッチに示されたテクスチュアの図形と実際の音楽の関わり合いを把握した後、そのモメントのみを実演するのですが、作品全体が長くても各モメントの長さは最大でも3分程度、細切れに聴く事により作品の魅力を隅々まで味わい尽くすことが出来ました。


