Jazzの最近のブログ記事
日本を代表するジャズ・パーカッショニスト富樫雅彦氏がシュトックハウゼンの79歳の誕生日に亡くなったそうです。
ソース:http://www.bounce.com/news/daily.php/11356/headlineclick
追悼として、ドン・チェリー、スティーヴ・レイシー、デイヴ・ホランドとの共演ライヴの「Bura-Bura」、ドン・チェリー、チャーリー・ヘイデンとの「Session in Paris, Vol.1」を聴きました。彼の美しく躍動する音色は世界的に見ても唯一無二だと思いますが、この「美しさ」の深みを文章で上手く表現できないのが悔やまれます。
敢えて書くとすれば、パーカッション奏者が音色を直接コントロールできるのはアタックの部分だけですが、富樫氏の音色は奏者のコントロールを離れた音が伸びている部分に特徴があります。この「残響」の温かい美しさが、共演するミュージシャンに大きなインスピレーションを与えるのではないでしょうか。
そうそう、スティーヴ・レイシーとのデュオのライヴの素晴らしい録音があるので後で聴いてみましょう。
公的なニュースはまだ発表されていないようですが、信頼出来る筋からの情報なのでお知らせします。
優等生的な息子に比べて地味な印象がありますが、オーネット・コールマン、キース・ジャレット、パット・メセニー、ポール・モチアンなどと共演したアルバムで見せる輝きは他の人には真似の出来ないものでした。
ご冥福をお祈りします。
[追記]
訃報を伝える記事を見つけましたのでlinkを張っておきます。
http://home.nestor.minsk.by/jazz/news/2006/09/0501.html
ジャック・ディジョネット(ドラム)、ジョン・スコフィールド(ギター)、ラリー・ゴールディングス(オルガン)によるユニット「Trio Beyond」による2枚組のライヴ・アルバムです。トニー・ウィリアムスの伝説的ユニット、ライフタイムへのオマージュとして結成されたユニットですが、このライヴでもライフタイムの1st、2ndアルバムからのナンバーを中心に選曲されています。
アルバム冒頭3秒を聴いただけで、とてつもない名演である事を確信できるほどの集中力に満ちた音楽がCD2枚分にたっぷりと収録されています。
前述のライフタイムのレパートリーに加えて、トニー・ウィリアムスが在籍していた時代のマイルス・デイヴィスのバンドのレパートリーも演奏されていますが、ここからも単なるライフタイムのトリビュート・バンドではないもっと幅広い音楽を追求しようとしている事が分かるかと思います。
曲目は以下の通りでが、「分かる」人にとってはたまらない選曲でしょう。
If
As One
Allar Be Praised
Saudades
Pee Wee
Spectrum
Seven Steps To Heaven
I Fall In Love Too Easily
Love In Blues
Big Nick
Emergency
マイルス門下生であるジャック・ディジョネットとジョン・スコフィールドの名前が並んでいるだけで、ゾクゾクしてしまいますが、同じマイルス門下の先輩であるトニー・ウィリアムスのパワフルで天才的なドラミングに敬意を払って演奏するとなると、気の抜けた演奏をするはずがありません。ジョン・スコフィールドとも親しい中堅のラリー・ゴールディングスも加えて、結果的にトニー・ウィリアムスのことは忘れてしまう程、3人のクリエイティヴな音楽に飲み込まれていきます。
ジャック・ディジョネットの躍動感と力強さを兼ね備えたドラムに、ジョン・スコフィールドの屈折したフレーズが絡みつく様に病みつきになってしまいますが、その二人の巨匠級の演奏に必死で食い入ろうとするラリー・ゴールディングスもなかなかの好演をしています。
ジャズ、ロック、ファンク、ブルースなど様々なスタイルの楽曲が立ち替わり登場しますが、アップテンポの曲からバラードまでどんなテンポ、スタイルでも自由自在に料理して説得力のある演奏を繰り広げます。
全体を通して非常にパワフルな印象を受けますが、パワー一辺倒に陥らない繊細な側面も見逃してはならないでしょう。
全ての収録曲について説明する余裕はありませんが、Seven Steps To HeavenやI Fall In Love Too Easilyといった60年代のマイルス・バンドの定番レパートリーが新鮮なアレンジをほどこされたり、このバンドのオリジナル曲Saudadesでマイルスの名盤「ビッチズ・ブリュー」の「スパニッシュ・キー」の引用があったりと、マイルス・ファンならニヤリとしてしまう演出も面白いですし、Big Nickでジョン・スコフィールドがソロを繰り広げる内にオルガンのバッキングがなくなり、ジャック・ディジョネットとの壮絶なデュオになってしまうコルトレーン的展開(この曲はもともとコルトレーンの曲をライフタイムがカヴァーしたものですから、参照元の参照元まで立ち戻ったということになります)など、数限りない見せ場があります。
このアルバム、実はECMレーベルなのですが、このレーベルのイメージからは想像しにくいほどの「熱い」テンションが全編に張りつめています。現在のジャズ・シーンでここまで「熱い」演奏というのも(もちろん表面的な大音量やキャッチーなリフなどによる見せかけの熱さではありません)なかなかお目に掛かれないのではないでしょうか。
汗がスピーカーからこちらに飛び散って来そうな勢いを持った「男のジャズ」と言えるでしょう。
サムライに扮した近藤等則がトランペットと刀を持っているジャケが冗談か本気か分かりませんが、このジャケの通りのサムライ・ジャズといった趣の内容になっています。
全編エレクトロニック・トランペットの無伴奏ソロ演奏のみで構成されていますが、虚無の空間に切り込んでいくような緊張感に満ちたフレーズの間の取り方は「和」の世界です。その音楽は、宛ら竹薮の中で孤独に尺八を吹いているかのようで、ノイズ的な奏法も多用していますが、これも多分に尺八的といえます。
ディレイを駆使する事によって、オーヴァーダブなしにポリフォニックな楽想も可能にしていますが、絶妙なバランス感覚で「間」が埋もれないように、うまく計算されています。
ジャズ(=即興演奏)と武士道の意外な近親性を強く感じさせる名作と言えると思いますが、そうした近親性を考えると、フリー・ジャズやジャンルを超えた即興演奏のシーンで何人かの日本人アーティストが海外からも高い評価を受けているのも納得できます。
ポール・モチアンの"On Broadway"シリーズの第4作です。
第3作まではビル・フリーゼル(ギター)、ジョー・ロヴァーノ(サックス)、チャーリー・ヘイデン(ベース)による編成で浮遊感溢れる演奏を繰り広げていましたが、最新作の今作では一変して、クリス・ポッター(サックス)、ラリー・グレナディア(ベース)によるトリオを核とした編成になっています。アーティストのクレジットが「Paul Motian Trio 2000+One」となっていますが、このトリオに、曲によってレベッカ・マーティン(ヴォーカル)、菊地雅章(ピアノ)が交替で加わっての2種のカルテットによる演奏が交替する構成になっています。
スタンダードの名曲を高水準で独創的な演奏で聴かせるコンセプトは同じですが、編成が変わった分アルバムのカラーはこれまでのシリーズからガラッと変わりました。ピアノレスのトリオをバックにレベッカ・マーティンが歌う組み合わせは一見奇妙に感じられるものの、50〜60年代のモダン・ジャズを感じさせる正統的且つ創造的な演奏が秀逸です。クリス・ポッターの演奏も風格に満ちた充実したものですし、レベッカ・マーティンのクールな味わいのヴォーカルも心地よいです。(ポール・モチアンのリーダー作でヴォーカル入りなのは、私の記憶が正しければ今回が初だと思います)
一方、菊地雅章が加わったカルテットの演奏では、スタンダード・ナンバーのメロディーが抽象的に解体され、耽美的に歪んだハーモニーの中を漂う、レベッカ・マーティンの加わったトラックとは全く異なる雰囲気を醸し出しています。
菊地のピアノの枯れた音色と独特の「間」が相変わらず素晴らしいですが(そして例のうなり声もかなり入っています)、クリス・ポッターがこちらではフリー・ジャズ以降の現在進行形のスタイルで演奏しています。
ポール・モチアンの精密なモノクロ写真を思わせるドラムが素晴らしいのはもちろんですが、ラリー・グレナディアの重厚なベースがこのアルバムの価値を高める事に貢献しています。チャーリー・ヘイデンとは全く違った重厚さが、このブロードウェイ・シリーズに新たな彩りを添えています。
収録曲の作品の一部を以下に紹介しておきます。
The Last Dance
Tea For Two
Never Let Me Go
Everything Happens To Me
I Loves You Porgy
etc.
ちなみに「Trio 2000」というユニットのクレジットは「Trio 2000+One」というアルバムで既に使用されています。
ポール・モチアン(ドラム)、クリス・ポッター(サックス)、スティーヴ・スワロウ(ベース)というエレクトリック・ビバップ・バンドのメンバーによるトリオに、曲によってゲストの菊地雅章(ピアノ)、ラリー・グレナディア(ベース)のどちらかが加わる、今作と類似した編成でした(今回のアルバムで、スティーヴ・スワロウに代わってラリー・グレナディアが正メンバーに「昇格」したことになります)。
菊地とはゲイリー・ピーコックを加えたトリオ「テザード・ムーン」でも共演が長いですが、複数のプロジェクトが入り組む様は、ポール・モチアンの織物のような緻密で複雑なドラミングと相似形を成しているようです。
タイトルの通りエヴァン・パーカーが鳥と共演したアルバムです。「鳥」といっても鳥の鳴き声を中心としたフィールド録音で曲によっては様々なエフェクトがかけられています。録音されたものとは言え、鳥の鳴き声と「交信」するかのようなエヴァン・パーカーのサクソフォンの響きは神秘的です。メシアンの鳥へのこだわりを考えるまでもなく、鳥の鳴き声、存在そのものには神々しさすら感じられます。
このアルバムは最近亡くなったフリー・ジャズ界の仙人スティーヴ・レイシーに捧げられていますが、ここでのエヴァン・パーカーの演奏はスティーヴ・レイシーのプレイを思わせるような断片的なメロディーを中心に構成されていて、得意技の循環呼吸によるピロピロしたフレーズは抑制されています。そして、エヴァン・パーカーが鳥の鳴き声を介して天上のスティーヴ・レイシーとセッションしているようにも感じられる、緊張感に満ちたフリー・ジャズの世界とは全く反対の安らぎに満ちた音楽へと仕上がっています。
ほとんど加工されていない鳥の鳴き声の録音と共演したトラックでは、鳥の声とソプラノ・サックスの響きが一瞬区別が着かなくなりそうなほどに溶け合う瞬間も少なくないですが、チャーリー・パーカーが「バード」という愛称で呼ばれたように、サックスの音色と鳥の鳴き声にはそもそも近親性があるのではないでしょうか?
そう考えると、スティーヴ・レイシーもエリック・ドルフィーもオーネット・コールマンも鳥っぽい感じがします。
逆に、コルトレーンは決して鳥っぽくは聞こえませんが。。
ちなみにジャケットの画像からはわかりにくいですが、動物が立体的に飛び出たりと、凝ったアートワークになっています。
Evan Parker - Soprano & Tenor Saxophones
John Coxon & Ashley Wales - Soundscapes

ICTUSレーベルの12枚の良質なフリー・ジャズのアルバムをまとめたボックスセットです。
豪華な装丁で驚きましたが、内容もそれに見合った豪華な内容です。
アンドレア・チェンタッツォのパーカッションを中心に、スティーヴ・レイシー、デレク・ベイリーなど様々なフリー・ジャズの名手との1970年代からごく最近までの共演作が収められていますが、マスタリングが素晴らしく70年代の録音も非常に鮮明に聴く事が出来ます。
詳しい内容はICTUSレーベルのHPをご覧下さい。
http://ictusrecords.com/30/explore.html
フリー・ジャズの世界では神様ともいえるデレク・ベイリー氏が亡くなったそうです。ご冥福をお祈りします。
ネタ元は以下のサイトです。
ここ何年もほんわかしたカントリー風の作品をひたすら発表してきたビル・フリーゼルの新譜は大きく方向性が変わっています。サンプラーやターンテーブルを使いダンス・ミュージック的な側面を全面に出した非常に都会的で洗練された音楽になってます。そうすると、いわゆるノリノリの音楽かというとそうではなくて、グルーヴ感があってもBGM的な感触があるし、ファッションショーとかものすごくお洒落なお店でかかってそうなライトな雰囲気も持っています。でも
安っぽい雰囲気にはならず、非常に緻密に作り込まれたアンサンブルとミックスが印象に残ります。すごく軽く叩いている感じのカスっというスネアの音色、曲によって加わるブラスやストリングスのアンサンブル、その上で軽やかに舞うビル・フリーゼルのギターなどの素材が自在に組み合わせを変えて表れては消える感じで、聞けば聞くほどじわじわと素晴らしさが滲み出てくる名盤だと思います。
トニー・ウィリアムズの70年代のこの名作がリマスタリングして発売されました。アラン・ホールズワースなんかも参加していてロックでポップな内容ですが、私はトニー・ウィリアムズのリーダー作の中でこのアルバムが一番好きだったりします。オノ・ヨーコのアルバムでのプレイなんかもそうなんですが、彼の叩くロックなリズムはものすごくグルーヴ感があって腰の辺りがむずむずしてくるのです。もちろん随所でジャズ的な遺伝子を感じさせるオカズも連発です。エレキ・ギターやエレピが往年のフュージョン・サウンドを奏でそれはそれで非常に高度なプレイなのですが、それらすべてが、トニー・ウィリアムズのドラムの引き立て役にしか聞こえないというのは彼のプレイの凄まじさを物語っています。
正直言って、彼のドラマーとしての超一級の素質に対して彼のリーダー作の出来栄えは今一つ何か足りない、と思わせるものが多いのですが、このアルバムは名作だと思います。
ジャズの好きな人なら知らない人はいない、ジャズ・ドラムの巨匠エルヴィン・ジョーンズが亡くなったそうです。慎んでご冥福をお祈り致します。
わざわざ当サイトで紹介するする必要もないほど「売れている」アルバムですが、内容的にもとても素晴らしいです。ノラのハスキーな声がまずいいですし、カントリー風にまとめられたアレンジと、リバーブを押さえたすっきりしたミックスもとても気持ち良いです。iPodで聴くのにもとても良い感じです。但し、国内盤を買ってはいけません。あの劣悪なCCCDだからです。おまけに値段も高いのです。輸入盤も当初同じようにCCCDのEU盤が店頭に並んでいましたが、最近はタワレコでもHMVでも非CCCDのUS盤が大量に入荷していますのでそちらを買いましょう。渋谷のタワレコなどはケッサクでEU盤とUS盤が同じコーナーで同じ値段で売っています。東芝EMIへの配慮かUS盤には「US盤」と書いたシールが張っているだけで、「CCCDではありません」などという記述はまったくありませんけど、CCCDがどういうものか知っていて、同じ値段で売っていたら絶対US盤買いますよね。
そういえば林檎姫のサード・アルバムはCCCDで結局泣く泣く買ったものの、それまでのアルバムほどに愛着が持てなくなってしまい、結局そのあとに出た「りんごのうた」 (CCCD)も買わずじまいです。DVDは即効で買いましたけどね。
とにかくあのマークを見るだけで憂鬱な気分になるので何とかして欲しいです。
チャーリー・パーカーがヴァーヴ・レーベルに残した録音のマスター・テイクのみを集めた3枚組のボックスセットです。チャーリー・パーカーの今まで発売されていた多くのCDでは別テイクがマスター・テイクのあとにすぐ続いて収録されていたりして、同じ曲を何度も聴く事になってしまうという苦しい構成になっていました(さもなければ収録時間が極端に短くなってしまうという事情もありますけど)が、このようにマスター・テイクばかりを集めて多くのアルバムに分かれていた音源をまとめて聴ける、というのは非常に嬉しい企画です。
すべて1950年前後の録音ですがリマスタリングの素晴らしさもあって、チャーリー・パーカーのプレイはもちろん、ベースやドラムの細かい音までクリアーに聞こえるのも特筆すべきでしょう。
やや取り扱いにくいものの豪華な装丁もいいです。
ヴァーヴ・レーベルに遺した録音は小編成のコンボ、ビッグバンド、ストリングス、コーラスとの共演、ラテン・ジャズ風の演奏などと、様々なフォーマットが試みられていますが、これらの録音が適度にミックスされていることによって、通して聴くと適度に変化があり、この辺の演出も心憎いです。
個人的にはストリングスとの共演が気に入っています。
彼のバラードの演奏は本当に素晴らしいです。
「バード」と呼ばれた彼の素晴らしい演奏については多くの人が語り尽くしているので私がとやかく言う必要はありませんが、あのマイルス・デイヴィスが晩年まで尊敬し自伝にもさまざまなエピソードを綴っている(表面的な演奏スタイルではない)彼の音楽の精神はこれからも受け継いで行かなくてはなりません。
ジョー・ヘンダーソンによるジョビン追悼アルバムです。前半はブラジルのミュージシャン、後半はハービー・ハンコック、クリスチャン・マックブライド、ジャック・ディジョネットというジャズ界のスーパー・スター達によるユニットとの共演、という構図になっています。つまり、前半はジョビンのオリジナルに近いスタイル、後半は洗練されたジャズのスタイルでの演奏ということですが、ジョー・ヘンダーソンによる素晴らしいテナー・サックスの音色がうまく全体の雰囲気を統一しています。
音量を抑え、ヴィブラートを極力排した彼のメロディーの歌わせ方が実にクールで、このアルバムも「秋のボサノヴァ」と言っていいようなメランコリックなムードを醸し出しています。
前半の正統的なブラジル風のスタイルによる演奏ももちろん素晴らしいのですが、後半のジャズのスタイルへ解体された演奏もとても興味深いです。特にハービー・ハンコックの演奏がバッキング、ソロともに絶品で、タメの効いたフレージング、ビル・エヴァンスを思わせる耽美的なハーモニー、圧倒的なテクニックなど、彼の最良な部分が多いに発揮されています。
No More Bluesのピアノ・ソロのイントロなど実に美しいです。
超メジャーな作品ではないですが、個人的に大好きなLigiaが収録されているのも嬉しいです。
ちょっとセクシーなジャケで、ピアノ・トリオ作品となると、ビル・エヴァンスの亜流みたいな軟弱な音楽を想像するかも知れませんが、一曲目からドカスカ、ドカスカとパワフルな演奏が炸裂します。なんといっても、リズム隊はロン・カーターとトニー・ウィリアムズでプロデュースはテオ・マセロです。そして当のジェリ・アレンも、長らくキーボードを排除していたオーネット・コールマンが始めて本格的に起用したピアニストだったり、学生時代にはエリック・ドルフィーについての論文を執筆したり、ウォレス・ルーニーとは公私共にわたるパートナーだったりという経歴から予想できる通り、そうとう個性の強い音楽性を持っています。彼女のアルバムにしてはスタンダード・ナンバーが多いですが、そうした曲も見事に彼女の音楽として生まれ変わってます。Tea For Twoでのトニー・ウィリアムズのイントロからいきなりロック魂炸裂したりいて「どんなお茶やねん」と関西弁で突っ込みを入れたくなったりします。演奏自体が相当パワフルなのですが、それを独特な録音がさらに強調しています。とにかく低音がでかいです。ベースやバスドラの音が非常識なまでに大きなバランスでミックスされているのです。これは以前持っていたアンプではうまく再生できず、低音が歪みまくってました。録音自体もちょっと粗さを感じさせるものなのですが、それがかえってパワフルさを強調させる結果となっています。
ボサ・ノヴァというと暑い夏を乗りきるための納涼音楽としてのイメージが非常に強いですが、このアルバムは「秋のボサノヴァ」とでも名付けたくなるような、クールなトーンがアルバム全体を支配しています。トランペット(or フリューゲルホルン)、アコースティック・ギター、ウッド・ベース、ドラムというキーボードを欠いた編成がすっきりとした響きを生み出しています。ダスコ・ゴイコヴィッチのトランペットの物憂げな音色とChega de saudadeやInsensatezなどのボサ・ノヴァの名曲の美しいメロディーの相性が抜群にいいですし、そこに絶妙なアコギのコードがかぶさることによって、ブラジル風だけれども非常にオリジナルなボサノヴァの世界を作り出すことに成功しています。
ミュート・トランペットの音色を聞くとどうしてもマイルスの亜流のように聞こえがちなのですが、彼の音色はマイルスとは全く違った個性を持っていて、この辺も非常に聞き所になっています。
http://www.annamariajopek.pl/pages/dyskografia/albumy/upojenie.html
このポーランド人歌手の名前を全く知りませんでしたが、このアルバムでパット・メセニーが全面参加しているということで聴いてみました。
ブックレットが最初から最後までポーランド語でよく詳細は分かりませんが、この人の声は神秘的な美しさを持っていて、それがパットのギターの音色と溶け合い得も言われぬ美しさを持った響きを作り出しています。
パット・メセニーのアルバムからのカバーも沢山あって、あらたにポーランド語の歌詞が付けられていますが、パット自身も演奏、アレンジに関わっていますから仕上がりも悪い訳がありません。
パット・メセニー・グループのメンバーでもあるリチャード・ボナの新譜は、切ないほど美しいアルバムです。冒頭の多重録音によるア・カペラのコーラスがいきなり素晴らしいですが、続く作品もアフリカのリズムとジャズ/フュージョン的なリズムが絶妙に混ざり合った珠玉のトラックばかりです。
彼の声の美しさはパット・メセニーのアルバムでも非常に重要な位置を占めていますが、このアルバムではその声を全編にわたって堪能する事が出来ます。彼と同じアフリカのミュージシャン、サリフ・ケイタもいくつかのトラックでゲストとして参加していますが、二人の声のキャラクターの対比も面白いです。
アコギのカッティングとか絶妙なリズム隊などの演奏やミックスもそれぞれ素晴らしいです。
でも、このアルバムを貫く最も重要な要素はスピリチュアルであるということです。
一曲ケニー・ギャレットが参加したトラックがあって出来は決して悪くないのですが、このトラックだけ妙にジャズっぽくて全体のアルバムの流れから遊離しているように聞こえてしまうのが少し残念です。



