
知らない間にドン・チェリーのレアなこの2つのアルバムが再発売されていました。どちらも70年初頭の録音なのですがベース、ドラム、タンブーラといったシンプルな編成による演奏でドン・チェリーの独自の音楽性がダイレクトに伝わってきます。ドン・チェリーというとオーネット・コールマンのグループでポケット・トランペットを吹いているイメージをまず思い浮かべる人が多いかと思いますが、彼のリーダー作はそうしたイメージとは遠く離れたワールド・ミュージック的なものが非常に多いです。彼のプレイはフリー・ジャズ的な世界からもフリーであり、「ジャズ」というジャンルからもフリーで、ここに紹介したアルバムもジャズ臭はほとんどありません。そして、トランペット以外に、ピアノ、フルート、パーカッションも演奏し歌声まで披露しますから、彼のトランペットの音色を聴こうとする人にはちょっと期待外れの作品に写るかもしれません。例えば彼のピアノの演奏などはほんとうに単純きわまりないいわゆる「ノー・テク」なものなのですが、そこで演奏されるシンプルながらもスピリチュアルなメロディーの魅力を味わえるようになると、彼のトランペット以外の楽器や歌の演奏の味わい深さもより理解できるようになってきます。当然ジャズ的なグルーヴや緊張感は皆無ですが(ハン・ベニンクの時折見せる強烈なドラミングは例外)、妙にまったりした感じや、だらだらと色々な楽器を持ち替えて音楽をあてどもなく繋げていく感じには非常に東洋的なセンスを感じます。
一時期「癒し系」という嘘臭い言葉がはやったり、それをキャッチコピーにした表面的な音楽が流行ったりもしましたが、実はドン・チェリーの音楽こそ真の癒しをもたらすのではないかと考えます。
ちなみに、Orientの卵焼き&アリのジャケは非常に秀逸だと思います。


