2010年1月アーカイブ


lux_edit.jpg

・音源編集(2009年8-9月)
自分の意図した音像を作り上げるため、編集作業は私自身が自宅で1ヶ月かけ、じっくりと行いました。スタジオでPro Toolsから書き出してもらった各トラックのWAVファイルを自宅のLogic上に最構成し、細かくピッチ、リズム、音量バランスを補正しました。
「編集」というとクラシック端では特に「ごまかし」っぽく捉える人も少なくありませんが、言ってみれば指揮者がリハーサルでアンサンブルを鍛えあげていく過程をコンピュータ上に置き換えたようなものです。
本アルバムでは編集作業はむしろ積極的に行い、生演奏ではできない境地を目指しました。

ちなみに上の画像は16声のリゲティの《ルクス・エテルナ》をLogic上で編集している画面です(クリックで拡大。24bit 96kHzで16トラック(+補助トラック)を編集するのはマシンにはかなりの負荷だったはず)。

編集で大活躍したのはMelodyneというオーディオ編集アプリケーションです。MIDIファイルを扱うかごとくオーディオ素材を自由に編集するこのソフト、音声ファイルを「音符」に分割してエディットできるので、この一音だけほんの少し高く、弱く、といった編集で重宝しました。当然やりすぎると、不自然な音になるので、その匙加減がポイントでした。

・編集仕上げ、ミックス・ダウン(2009年12月)
録音の印象を大きく決めるリヴァーブは高品質なものを使いたい、という嶋田氏の希望もあり、私のマシンのLogicで各トラックの音量バランスをとった状態のものをWAVファイルに書き出し、そのデータを収めたハードディスクを嶋田氏へ送付しました(パン設定はメールで送信)。
そして、嶋田氏のマシン上でリヴァーブをかけ、ステレオ・ミックスを作成する作業を行いました。中世から現代までさまざまなスタイルの作品を集めたので、教会風の残響から、ドライな状態まで種々の状態が混在する結果になりました。

・マスタリング(2010年1月)
古い曲から新しい曲、2声から16声まで、多種多様な作品を集めたため、各曲の音量バランスを取るのには苦心しました。一度マスタリングしてみたものの、アルバム全曲を改めて聴いてみると、あまりバランスがよくなかったので、再度調整、ということになりました。
嶋田氏と直接やりとりする時間が取れなかったので、私のマシン上のWaveBurnerで音量補正をし、このトラックは2dB上げ、などというデータを知らせ、嶋田氏にもチェックしてもらいました。そして、明日、その最終確認をしてプレス工場に送る最終マスターが仕上がるはずです。

なお、編集仕上げ、ミックス・ダウン、及びマスタリングはSamplitudeで行いました。

・ジャケット、ブックレット原稿作成(2010年1月)
ジャケットのロゴのデザインなども、私がPhotoshopで行いました。本来はIllustratorなどでやるべきでしょうが、ある程度手馴れていて、所有しているものがPhotoshopだったのでこのような変則的な処置となりました。歌詞対訳も一部をのぞき私自身で作成、解説文も自前の文章を用意しました。曲数が多いので、曲目インデックスの校正には根気強い作業が必要となりました。ちなみにブックレットの製作作業は嶋田氏のマシン上のInDesignで行い、進捗状況をPDFに書き出したものをメールでやりとりしながら作業を進めました。
2月に出すCD《MONO=POLI》をどのように作ったか、備忘録がわりにメモしておきます。

・デモ音源の製作
自分の声のみによる多重録音が、どのような演奏結果になるのか予想がつかなかったので、自宅で簡易に録音、ミキシングをし、共同プロデューサーである嶋田亮氏にその音源を聴いてもらいながら、選曲をしていきました。
当然、収録曲全曲のデモ音源を作りましたし、これ以外にボツにした作品もいくつかあります。
録音、編集にはLogicを使用しました。

・ガイド・トラック、クリック・トラックの製作
正式レコーディングを円滑に行うため、自宅でガイド・トラック、クリック・トラックを製作しました。
クリック・トラックはデモ音源の録音で使用したLogicのクリック音をWAVファイルに書きだしました。基本的にイン・テンポのクリックですが、作品によっては、微妙なルバートが欲しいものもあるので、正式レコーディングに備えて、そうした微妙なテンポ変化もクリックに反映するように細かく調整しました。

基本的にア・カペラ作品ばかりの本盤ですが、多重録音すると微妙なピッチのずれが大きく影響することもあるので、レコーディング時にクリックと一緒に聴くためのガイド音源をMIDIで作成しました。

・正式なレコーディング(2009年7−8月)
世田谷区砧にあるトーンマイスターというヴォーカル・ブースのあるスタジオで9日間にわたって行いました。少なくとも、演奏時間×声部数×テイク数を要しますので最大16声部の曲を含む今回の録音は、9日間でも、かなり駆け足で進めたことになります。
ソプラノなど女声声部もファルセットで歌ったのですが、ファルセットはどうしても喉の消耗が早いため、その辺のペース配分も難しかったです。
録音スタジオというと、閉塞感が強くあまり長くいたくないような所もありますが、このスタジオはゆったりとくつろいで録音できるとても良い環境でした。
録音はPro Toolsで行いました。24bit 96kHzでマルチ録音したため、全曲のファイルはDVD-R数枚分に及びました。

私のCD「MONO=POLI」がHMVのオンライン・ショップで予約可能となっています。
紹介文もありますので、よろしければ、ご覧下さい。
もちろん予約して頂ければもっと嬉しいです。


その他、雑誌、FMラジオなどでも取り上げられる予定ですので、追ってお知らせします。


[追記]


ご予約:
Amazon.co.jp
TOWER RECORDS
HMV

ニュース記事:
CDの製作も、マスタリング、ブックレット作成、各種プロモーションなど佳境に入ってきましたが、進捗状況をTwitterで「実況つぶやき」することにしました。

下のリンクからつぶやきを辿れます。
試聴盤を聴いて頂いた鈴木淳史氏の感想もあります。

コメント、ご質問等ある方は、Twitterで#monopoliのハッシュタグをつけてつぶやいて下さい。

ちなみに、ぶらあぼに広告が出ていますが、こちらでも閲覧可能です。
昨日お越し下さった皆様、ありがとうございました。
さて、そのリハで橋本氏と、現代音楽の演奏において、どうしても世界初演、日本初演、ということに目が行きがちですが、一度演奏したきりにせず、再演を重ねることによって、その作品を後世に残すことの方が重要ではないか、といったような雑談をしました。

それで、私の場合はどうか、と思い、どれくらい再演を重ねているか、振り返ってみました。

圧倒的に多いのが初演のみ、というものですが、2度目の演奏、というのはそれなりの数あります。
個人的には3度やると、たくさんやったな、という気になるので、3度以上演奏したものの記録をまとめてみました。

演奏回数:3回

ケージ:龍安寺
2003 同志社大学
2007 ケルン・日本文化会館
2007 レンタルスペースSF

シェルシ:WO MA
2005 公園通りクラシックス(3曲目は省略)
2005 秋吉台
2007 ケルン・日本文化会館

シュトックハウゼン:シュピラール
2007 キュルテン
2008 門仲天井ホール
2008 東大

クセナキス:カッサンドラ
2003 豊中市立ローズ文化センター
2004 北とぴあ
2005 大阪市中央公会堂

川島素晴:インヴェンションIII
2004 北とぴあ
2004 新居浜文化センター
2005 公園通りクラシックス

湯浅譲二:R.D.レインからの二篇
2005 秋吉台
2008 東京芸術大学
2009 東京オペラシティ

中川俊郎:ベルジュレット
2004 新居浜文化センター
2005 公園通りクラシックス
2009 公園通りクラシックス

ベリオ:セクエンツァIII
2004 北とぴあ
2004 南予文化会館
2006 公園通りクラシックス

演奏回数:4回

シュトックハウゼン:ティアクライス
2001 キュルテン
2003 同志社
2004 北とぴあ
2008 杉並公会堂

中川俊郎:主の祈り
2007 すみだトリフォニー
2008 桐朋学園大学
2008 東京芸術大学
2009 公園通りクラシックス

演奏回数:5回

ケージ:声のためのソロ2
2006 低音デュオ(with テューバのためのソロ)
2007 公園通りクラシックス(with ソング・ブックス、ピアノのためのソロ、テューバのためのソロ)
2008 門仲天井ホール(4人による同時演奏)
2008 東京芸術大学(with アリア)
2010 CD《MONO=POLI》に収録(4ヴァージョンの多重録音)

演奏回数:10回

湯浅譲二:天気予報所見
2004 北とぴあ
2004 新居浜文化センター
2004 南予文化会館
2005 公園通りクラシックス
2005 秋吉台
2006 東京オペラシティ
2008 トーキョーワンダーサイト本郷
2008 東京芸術大学
2009 公園通りクラシックス
2010 桐朋学園大学

やはり、圧倒的に多いのが《天気予報所見》ですが、ケージの《声のためのソロ2》が多いのは意外でした。同じケージでも《アリア》は定番過ぎるゆえに演奏を避けているので、ランク外です。
湯浅譲二氏の《天気予報所見》、あさっての演奏で(たぶん)10回目の演奏となります。

桐朋学園の学内の行事ですが、聴講料2000円をお支払い下されば、学外の方のご入場も可能です。
それにしても、学内の行事の割にはかなりゴージャスな演奏陣で、桐朋の学生が羨ましいです。


平成21年度 桐朋学園大学音楽学部・作曲専攻教育支援プログラム 
≪湯浅譲二作品によるワークショップとコンサート≫ 

2010年1月13日(水) 18:00-21:00 [桐朋学園大学203教室] 

-プログラム- 
 * 弦楽四重奏のためのプロジェクション(1970) 
 * 天気予報所見(1983) 
 * 弦楽トリオのためのプロジェクション(2001) 
 * R.D.レインからの二編「私は夢を見た」、「愛は降り積む雪のごとく」(2002) 
 * 歌曲「空」(2003)  谷川俊太郎 詩 ソプラノとピアノ 
 * 内触覚的宇宙 Ⅳ(1997)  チェロとピアノ 
 * 箏曲・蕪村五句(2007) 20弦箏と歌 

-出演(プログラム順)- 
橋本晋哉(Tuba) 松平敬(Bar)、平松英子(sop)、藤井一興(pf)、富永佐恵子(Vc)、佐々木京子(pf)、吉村七重(箏)、他 
本学学生 



[追記]
備忘録として、この曲の演奏記録、私の記憶を辿って書いておきます。

オリジナル版(共演:曽我部清典氏のトランペット)
・北とぴあ
・宇和島
・新居浜
・公園通りクラシックス

テューバとの版(共演:橋本晋哉氏)
・秋吉台
・オペラシティ
・東京ワンダーサイト
・東京芸大、千住キャンパス
・公園通りクラシックス
・桐朋学園大学

近々発売される予定のパット・メセニーの新作《Orchestrion》は、いわゆるひとりオーケストラによるソロ作品ですが、それだけだと私のCDも同じ発想ですし、パット・メセニー自身もシンクラヴィアなどを駆使してそうしたことを既に行っています。

このプロジェクトのすごいのは、それをリアルタイムで生演奏でひとりオーケストラをやってしまおうという発想です。(おそらくMIDIデータなどに記録した自分の演奏データを)機械じかけの楽器で自動演奏させ、その自動演奏オーケストラと彼のギターが共演する、という仕掛けです(上の動画を見るのがてっとり早いでしょう)。

このヴィデオを見るのはとても面白いですが、機械による演奏があまりにも自然すぎて、これを映像をともなわないCDで聴いたとしたら、このコンセプトの面白さの90%は理解できないかと思われます。

映像でもそれなりに面白いですが、編集でどうにでもできてしまうこともあるので、この面白さを体験するには、絶対的に生演奏でなくてはなりません。
ライヴ演奏をこの映像の距離で聴ければ最高なのですが。。
先日の記事でお知らせした私のCD《MONO=POLI》の収録曲一覧です。
曲順に並べてあります。

作者不詳(イギリス):夏のカノン(1260年頃) 
作者不詳:アレ〈歌え〉ルヤ(13世紀) 
作者不詳(イギリス):ねんころりん、私は可愛らしい、上品な姿をみた(14-15世紀) 
作者不詳:ローマは喜び歓喜の声をあげよ(12-13世紀) 
ダンスタブル(ca.1390-1453):聖なるマリア
ジェズアルド(ca.1560-1613):《マドリガル曲集第6巻》より(1611年出版) 
  麗しき人よ、あなたが去ってしまうのなら 
  ああ、なんとむなしく、私はため息をつくのか 
  私は、ただ呼吸する
J・S・バッハ(1685-1750):8声のカノン BWV 1072(1754年出版) 
モーツァルト(1756-1791):心より愛します KV 348(382g()1782年) 
グリーグ(1843-1907):めでたし、海の星(1893年) 
ストラヴィンスキー(1882-1971):アヴェ・マリア(1934/49年) 
シェーンベルク(1874-1951):《3つの風刺Op.28》より 分かれ道にて(1925年) 
ケージ(1912-1992):《居間の音楽》より 昔話(1940年)
リゲティ(1923-2006):ルクス・エテルナ(1966年)
松平 敬(1971- ):モノ=ポリ(2009年)
ブライアーズ(1943- ):《マドリガル集第2巻》より(2002年)
  私は、この地上に天使のような姿を見た 
  おお、あてどない歩みよ、おお、うつろいやすく、しかし確固とした思いよ
ベリオ(1925-2003):もし私が魚なら(2002年)
ケージ:声のためのソロ2 [4ヴァージョンの同時演奏](1960年) 
シェーンベルク:千年を三度 Op. 50A(1949年)
ドビュッシー(1862-1918):シャルル・ドルレアンの3つの歌(1898/1908年)
パーセル(1659-1695):主よ、わが祈りをききたまえ(1680年頃) 
パレストリーナ(ca.1525-1594):主よ、今こそあなたは 
ジョスカン・デ・プレ(ca.1440-1521):ミサ《ダ・パーチェム》より アニュス・デイ 
作者不詳(スペイン):3人のムーア娘(15-16世紀) 
作者不詳(スペイン):手に手をとって(15-16世紀) 
マショー(ca.1300-1377):我が終わりは我が始まり
monopoli_cover.jpg

私の初めてのソロアルバムとなる《MONO=POLI》が、2月20日に発売されます。

このCDは13〜21世紀の31曲の声楽アンサンブル作品が収録されていますが、ソプラノからバスまで、すべてのパートを私の声の多重録音で演奏しています。
レコーディングも編集も気が遠くなりそうになりました。。。

詳細は追ってお知らせしますが、とりあえずジャケット画像(クリックで拡大)をご覧下さい。
ほんの数時間前まで、ずっとPhotoshopと格闘して作っていた、まさに出来立てのホヤホヤです。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

今年も懲りずに、マイナーなアニヴァーサリーを調べてみました。
シューマン、ショパンといったメジャーどころは敢えて外していますが、マーラーの生誕150年はノーマークだったので、入れています。
個人的なツボには☆印を付しています。

生誕500年
アントニオ・デ・カベソン (1510-1566) ☆
アンドレーア・ガブリエーリ (1510-1586) ☆☆

生誕300年
ジョヴァンニ・バッティスタ・ペルゴレージ(1710-1736) ☆
ドメニコ・アルベルティ(1710-1740) ☆☆☆
ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ (1710-1784)

生誕200年
ノルベルト・ブルグミュラー(1810-1836) ☆☆☆(あのブルグミュラーの弟)
オットー・ニコライ(1810-1849)

生誕150年
フーゴー・ヴォルフ(1860-1903) 
エドワード・マクダウェル(1860-1908)  
イサーク・アルベニス(1860-1909)
グスタフ・マーラー(1860-1911) 
イグナツィ・パデレフスキ(1860-1941)  
ギュスターヴ・シャルパンティエ(1860-1956)

生誕100年
サミュエル・バーバー(1910-1981)
ウィリアム・シューマン(1910-1992)
ピエール・シェフェール(1910-1995) ☆
平井康三郎(1910-2002) ☆

没後100年
カール・ライネッケ(1824-1910)
ミリイ・バラキレフ(1837-1910)

生誕80年
ロバート・アシュリー(1930-)
諸井誠(1930-) ☆
ディーター・シュネーベル(1930-)

生誕70年
フランク・ザッパ(1940-1993)

生誕60年
ジェイムズ・ディロン(1950-)
久石譲(1950-)

生誕50年
猿谷紀郎(1960-)

没後50年
エルンスト・フォン・ドホナーニ(1877-1960)
アーサー・ベンジャミン(1893-1960)

生誕40年
新垣隆(1970-)
鈴木純明(1970-)

没後30年
入野義朗(1921-1980)

没後20年
アーロン・コープランド(1900-1990)(生誕110年でもあります)

没後10年
中田喜直(1923-2000)
アラン・ホヴァネス(1911-2000) ☆
フランコ・ドナトーニ(1927-2000)

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おしらせ

■松平敬 1stアルバム
《MONO=POLI》


 マショーからケージまでの声楽アンサンブル作品を、多重録音によってすべて一人の声のみで演奏したアルバム。
 16声部のリゲティ《ルクス・エテルナ》も収録。

ENZO Recordings
EZCD-10006

プロモーション・ヴィデオ

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松平敬 - モノ=ポリ・ひとりの声のための交響曲

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