作曲家・鈴木治行氏の新作CDです。鈴木氏の作品は昨年の双子座三重奏団のライヴで《蛇行》という異様な作品を初演させてもらいました。バリトンの歌う歌詞が、作曲のコンセプトを解説する自己言及的な面白さを狙っていましたが、このCDで収められている作品は歌ではなく語りがメインで、そこに2〜4人の器楽アンサンブル(声を含むものもあり)や様々な(リュック・フェラーリの影響を思わせる)録音音源が絡みます。
器楽アンサンブルが、語られる内容を音楽化したようなパッセージを演奏したかと思うと、アンサンブルの演奏する部分の楽曲解説を語りが行ったり、と意味性の図と地が絶えず揺れ動くような不思議なコンセプトが、作品ごとに異なるアイデアのもので展開されます。
演奏の背景のように環境音の録音が再生されていたかと思うと、そのピッチがグリッサンドで上下し、その変化を楽器が模倣し始めるなど、異なった要素の図と地の反転が不意に起こるのもスリリングですし、語られる言葉と音楽の関連・無関連の遊びにも様々な仕掛けが施されています。
徹底的に無表情に語られる語りの声色と隙間だらけのアンサンブル部のテクスチュア、その隙間に「映写」される様々な環境音の全体が醸し出す音の雰囲気はラジオ・ドラマを思わせます。もともとはコンサートなどでの生演奏で演奏されていた作品も、このようにCDにまとめられると、はじめから「録音されたもの」として聴かれる前提で作曲されたように聴こえる効果が興味深いです。
iPodに入れて出先で聴くと、耳元に「変態的」な語りがささやきかけるのがとても気持ちよいです。
現代音楽界も、このような才能がもっと活躍できる雰囲気になると、もっと刺激的なものになるでしょう。
お薦めのアルバムです(ジャケット画像がamazonへのリンクになっています)。



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