2006年12月アーカイブ

前回の記事で取り上げた「ネオンと絵具箱」折りを見て読んでいますが、私の故郷であり大竹氏の現在の制作拠点である宇和島ネタは私にとって奇妙で不可思議な感覚を与えます。

宇和島は非常に小さな町なので、本に書かれているちょっとした場所は大体イメージがつかめるのですが、「年輪ディープパープル」と題されたエッセイには天と地がひっくり返るほどの衝撃を受けました。そのエッセイに登場する「ばあさん」の人となりをうまく表現した大竹氏の文才も素晴らしいのですが、その「ばあさん」の特徴があまりにも私の非常に近い関係の人物に似ていることが、大竹氏と「ばあさん」の出会いのシーンからうかがえました。これはひょっとすると、とドキドキしながら読み進めて行くにつれその確信はどんどん深まっていきました。

その「ばあさん」とはどう考えても私の祖母なのです。

東京の道をぶらっと歩いていると突然、以前故郷にあった「宇和島駅」の看板が表れた衝撃もかなりのものでしたが、なんとなく買った本の中に自分の親戚のことが大きく取り上げられていることにはそれ以上の衝撃を受けました。

私の親戚云々ということをさておいても、単純に面白いエピソードなので一読をお薦めします。

neonegu.jpgpipeline.jpg
昨日たまたま本屋で手にした大竹伸朗のエッセイ集「ネオンと絵具箱」をパラパラめくってみると、「全景」展の会場の屋上に燦然と鎮座していた「宇和島駅」の看板(直前のエントリーに記載)についての話があり、思わず本を購入しました。
やはり「宇和島駅」は6, 7年ほど前まで実際に使われていた宇和島駅の看板で、駅改築の際そのまま捨てられる運命にあった看板を大竹氏が駅から譲り受けたとのことです。
あの看板は私が宇和島に住んでいた高校時代まで当たり前すぎる風景の一部として見慣れていて、当たり前すぎるが故、駅が改築されて看板がなくなっていることにも気付かなかったくらいなのですが、東京のど真ん中で思わずあの看板を発見した時、当たり前すぎる記憶の奥深くにしまわれていた(記憶にあることすら意識されていない)イメージが、本来ありえない文脈で突然目の前の現物として表れた衝撃は、ある意味今年最大のイベントといってもいいかもしれません。

その他、宇和島でのエピソードなどもたくさんのっていますが、何の変哲もない現代芸術とは縁のもっともなさそうな田舎町で、世界的な奇才が常人の発想の全く及ばない様々なことを考えているという現象に、半分当事者のような不思議な感覚を持ちながら読み進んでいるところです。

一方「全景」展の売店で売っていたこれまた世界的奇才ミュージシャンのヤマンタカƎYE氏と共作したCD「PIPELINE」の封をようやく切り、天才なのかキ○ガイなのか判断しかねる「紙一重サウンド」に耳を傾けながら付録のブックレット「ヤマンタカ日記」を読み、ここでまた悶絶します。

宇和島と大阪で録音されたこのCDの製作日記である「ヤマンタカ日記」はレコーディングの合間でのエピソード満載ですが、矢継ぎ早に繰り出されるヤマンタカ氏の「紙一重」的な行動と発言の数々に圧倒され、そのいくつかが何の変哲もない我が故郷宇和島で起こっていたことにまたしても大きな衝撃を受けます。

宇和島が日本に誇る(?)「秘宝」の宝庫、多賀神社(別名凸凹神社)でのエピソード、大阪での「万引き」ならぬ「万置き」(お店の人に無断で変な商品を店に勝手に陳列して逃げる)のエピソードなど、大竹氏のツボを押さえた文章と、そのユーモアをさらに増幅させるような絶妙な装丁で私の心は鷲掴みにされてしまいました。

uwajimaeki.jpg東京都現代美術館で明日まで開催されている大竹伸朗「全景」を見に行ってきました。偏狭的なコラージュと猥雑な香りのする色彩感覚などひとつひとつの作品だけでもかなりの情報量があるのですが、小学校時代の作品から現在に至る2000点という膨大な作品群を一挙に集めての大規模な展覧会で、3分の1を見た位の段階で頭が朦朧とし、全部見終わった後には目がチカチカするくらいぐったりと疲れてしまいました。
この展覧会自体が一つの巨大なコラージュとして考えられているのでしょう。

作品数があまりにも多いので感想を書いているとキリがありませんが、強く印象に残ったのが小学校時代の作品です。図画工作の課題で書いたような絵、マンガや図鑑から模写したようなスケッチ、学校の文集の表紙に選ばれたような版画など、小学校の時代からすでに「芸術作品」になっているようなものも多く、残されているその時期の作品自体の点数の多さも驚異的でした。

上の写真は美術館の建物の屋上に展示されているのですが、これも大竹伸朗の作品です。
私の故郷であり、大竹氏が現在住んでいる宇和島の駅の看板ですが、見覚えがあるので、これは多分以前(20年程前まで)実際に宇和島駅にあった看板そのものを買い取ったんだと思います。美術館に辿り着いた瞬間にその看板を発見してぎょっとしましたが、それは私にとっては東京をぶらぶら歩いていたら突然故郷に辿り着いたような異様な感覚に襲われたからです。

この「宇和島駅」をあしらったTシャツが売店で売ったので、購入したことは言うまでもありません。
リアル宇和島駅でこのTシャツは売っていないのでしょうか。。。。

ちなみに「全景」公式サイトはこちらです。
http://shinroohtake.jp/index.html

昨日、テューバ、セルパン奏者の橋本晋哉さんとの低音デュオ・ライヴに多くの方にお越し頂きありがとうございました。
なぜか最前列に重鎮作曲家、日本を代表する現代音楽演奏家の方々がずらりと並ぶ異様な状況での演奏になりましたが、無事に終了しました。

来年には低音デュオ2nd LIVEも予定しておりますので、またお越し頂ければと思います。

21日の低音デュオ・ライヴで演奏するTubaBaliBariTuvaは橋本氏と私の共作というクレジットになっていますが、要は即興演奏です。
命名は私ですがテューバとトゥヴァ共和国、バリトンとバリ島を掛け合わせたダジャレです。
トゥヴァといえばホーメイ、バリ島といえばガムランですが、それらの音源を素材にしたミュージック・コンクレートを背景に即興演奏をする計画です。
そのミュージック・コンクレートは私が製作しているところですが(ほぼ完成)、ピッチや再生速度の極端な変化、リング変調やフィルター処理などを施してほとんど元の音楽が想像出来ない部分も多いです。煮物で言えば煮込みすぎた状態といえますが、やや煮えた状態、ほとんど生の状態のものとうまくバランスをとり、それなりに満足のいく出来になってきましたが、低音デュオ・ライヴの名前に負けない、低音域に音がうごめくダークな音響に仕上がっています。

生演奏の背景とはいえ、自作の電子音楽の類を人前に晒すのは始めてなので、反応がこわくもあり楽しみでもあります。

以前から注文していたシュトックハウゼンの新譜KLANG1時間目「昇天」、4時間目「天国の扉」が届きました。
取急ぎ、大まかな印象だけ書いておきます。

まず「1時間目」ですがシンセの右手パートを右チャンネル、左手パートを左チャンネルに振り分けたミックスによって、左手と右手のポリ・テンポによる複雑な絡み合いを極めてクリアーに楽しむ事が出来ます。シンセの音色の美しさも堪能しました。
改めて聴いてみて、本来パイプ・オルガンを想定して作曲したこともあって、21世紀にバッハが甦って作曲したらこのような作品を作るだろうな、と感じました。時々挿入されるソプラノやテノールのメロディーはまさに定旋律のようですし。

軽い衝撃を受けたのが「4時間目」です。
キュルテンでの初演では、6つの素材を使った見た目にも美しいドアのあちこちを叩きまくるパフォーマンス的な要素が強く印象に残りましたが、今回その視覚的要素を拝して聴いてみると、一見極めて音色の限定された「ドア」という「楽器」から実に多彩な音色を生み出しているか、ということが実感出来たのです。
もちろん初演のときにも同じようなことも感じたのですが、間近で録音している分(初演では、シュトックハウゼン作品には珍しく一切PAを通していませんでした)実演では聴き取れなかった微細な音色の変化が非常に鮮明に捉えられています。
視覚的要素の強い作品から視覚的要素を外してみると、無内容な音楽だけが残る作品も多い中、この作品では視覚的要素を外すと、抽象的な美しさをもったリズムと音色の饗宴が浮かび上がってきたという訳です。

ちなみに、余白に収められた「4時間目」の派生作品となる「TÜRIN」ですが、これにも吃驚です。
「4時間目」で使用したドアの様々な場所を叩いて24のサンプルを録音し、そのピッチをKLANGの24音セリーを演奏出来るように変更して、同じピッチのリンと同時にこのセリーを非常にゆっくりと演奏します。このアタック音自体もかなり異様なサウンドで、ここに異常なまでに長い数分間に及ぶリバーブ音を付加しているのですが、原音に対するリバーブ音の音量が通常のリバーブよりも極めて大きく、音量の減衰も非常にゆっくりなので、リバーブが凍りついたまま伸びているような異様な音響になっています。その「残響」が残っている内に次のアタック音が演奏されるので、この残響音もどんどん重なっていきクラスター状になっていき、非日常な世界へと誘われます。
この静的な音響は「3時間目:自然の持続時間」を連想させますが、アコースティック・ピアノのためのこの作品をミュージック・コンクレートでやってみました、という感じの仕上がりになっています。

この宇宙的な音響の合間にシュトックハウゼンの語りが入りますが、「Liebe」「Freundschaft」などの「美しいことば」がポツポツと話されるだけです。その力の抜け具合がなんともゆるくて、微妙にツボにはまります。

昨日テューバの橋本さんと行う21日の低音デュオ・ライヴの初リハーサルを行いました。
「怪盗キクノロと名探偵アキチ君」と中世ポリフォニーものを中心に練習しましたが、「キクノロ」での橋本氏の超絶テューバにはぶったまげました。もともとコントラバスのために書かれた至難なパートを特殊奏法も交えて吹きまくる様は一見の価値ありでしょう。
私はこの曲では「語り」を担当しますが、かなり入り組んだテューバのパートとタイミングを見計らいつつ、同時に怪盗キクノロ、アキチ警部、地の語りと3通りの声色を使い分けなくてはならないので私も決して楽ではありません。

一方、セルパンとバリトンという奇妙な編成で中世の2声ポリフォニー小品を演奏しますが、音域、音色、ヴォリュームのバランスなど実はかなりフィットしていて、予想以上に面白そうなものに仕上がりそうな予感がします。
パレストリーナ的な均整のとれたポリフォニーとは対極にある、歪で野蛮な感触すらある作品(平行5度進行のような後世では忌避される響きが頻出します)、メリスマを多用した古雅な味わいの作品など、たった2声でも色々と出来ることを実感出来るのではないかと思います。ちなみに最も古いものではペロタンなどノートルダム楽派を思わせるオルガヌム風なものも演奏しますから、12世紀から21世紀までほとんど1000年に渡る時代を一晩の演奏会で体感することになります。
舞曲風なリズムを持つ曲では私が歌いながら数種類の打楽器を演奏しますが、これも中々面白い響きになると思います。

ちなみに演奏する予定の中世作品は以下の通りです(時代順)。

Domino fidelium jubila 作者不詳(12世紀)
Domino 作者不詳(13世紀)
Roma gaudens jubila 作者不詳(12〜13世紀)
Non al suo amante 作曲:Jacopo da Bologna(14世紀)
Io son un pelegrin 作曲:Giovanni da Cascia(14世紀)
An heavenly song 作者不詳(14〜15世紀)
Lullay lullow 作者不詳(14〜15世紀)
Enforce we us with all our might 作者不詳(14〜15世紀)

演奏会のご予約申込はこちらからどうぞ。

xenakis_perc.jpgクセナキスの打楽器作品を収めた作品は数多くありますが、今回modeレーベルから発売されたものは3枚組となっており打楽器がらみの主要作品を網羅しています。

個人的には私のレパートリーでもある「カッサンドラ」が気になって購入しましたが、バリトン・パートを歌ったフィリップ・ラーソンの演奏にはかなり不満でした。以前から発売されているサッカスが歌ったものは大幅なカットもあるし、譜面が追えないくらいに滅茶苦茶な演奏(狂気に満ちた勢いはものすごいですが)でそれに比べると「まともな」演奏ではあります。

でも、彼がなぜリズムをきちんと拍子に合わせないのかが理解出来ません。五線譜に書かれているものの通常の音符を使わず曲線で大雑把に書かれている譜面ではありますが、16分音符単位でリズムを刻んでいくのは記譜から明らかです。それを「微妙に」ずらして演奏しているためにグルーブ感が全く出て来ませんし、打楽器パートとシンクロした「決め」のアクセントも当然完全無視、おまけに(きちんと譜面を見ながらチェックしてませんが)記譜されたグリッサンドのラインもそれほど尊重していないようなので、メロディー的にもコントラストが非常に少ない単調なものになっています。
打楽器の演奏自体もジェントルすぎてそれほど面白く感じません(録音、ミキシングの問題もあるのかもしれませんが)。

手前味噌ですが、これなら私のほうがはるかに面白い演奏ができる、と思いました。
20分のこの大作をライヴで完璧に演奏するのは非常に困難ですけど、セッション録音で完璧な状態のものを作ってみたいものですね。

ちなみに本CDの収録曲は以下の通りです。

打楽器ソロ作品:
Psappha(1975), Rebons(1989)

デュオ作品:
Dmaathen(1977) オーボエとのデュオ
Komboï(1981) チェンバロとのデュオ
Kassandra(1987) バリトンとのデュオ
Oophaa(1989) チェンバロとのデュオ

打楽器アンサンブル作品:
Persephassa(1969), Pléïades(1978), Okho(1989)

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