2005年10月アーカイブ

新譜CDが以下の通り発売されました。打楽器作品集と「プンクテ」最新版です。

CD79:
VIBRA-ELUFA for vibraphone
KOMET Version for a percussionist, electronic and concrete music, sound projectionist
NASENFLÜGELTANZ for a percussionist and a synthesizer player
PIANO PIECE XVIII (WEDNESDAY FORMULA) for electronic piano
WEDNESDAY FORMULA with 3 percussionists (METAL – WOOD – SKIN)
23 €


CD 81:
Introduction by Stockhausen to PUNKTE (in German and English)
PUNKTE for orchestra (recording 2004)
23 €

詳しくはこちらをご覧下さい。


初期のオーケストラ曲「プンクテ」は全集第2巻にも収録されていますが、今回のものはそれ以降に改訂された部分も反映した出版譜に基づく演奏(エトヴェシュ指揮・ケルン放送響)で非常に期待できます。
初演された時の版だけ聞くと初期の失敗作のような印象を受けますが、幾多の改訂を経て非常に緻密なオーケストレーションの妙を楽しむことができる大傑作へと変貌しています。


ところで、信頼できる筋からの情報によると、現在進行中のプロジェクト「KLANG」のいくつかの部分が来年初演されるようです。
(シュトックハウゼン講習会でも演奏されるらしいです)
現時点で分かっている情報を紹介します。

「第1時間目」 ソプラノ、テノール、シンセサイザーのために
「第2時間目」 2台のハープのために
「第3時間目」 ピアノのために(二人のピアニストが交替しながら演奏するようです)
「第4時間目 - 天国の扉 HIMMELS TÜR」 打楽器奏者とドアのために

「第1時間目」は今年ミラノでソプラノ、テノール、オルガンの編成で初演されましたが、左右の手で異なるテンポを同時に演奏しなくてはならないオルガン・パートの演奏があまりうまくいかなかったようで、オルガンパートをシンセサイザーに置き換えたアントニオの演奏によって仕切り直すようです。
「第2時間目」は「第1時間目」と同様にミラノ大聖堂からの委嘱を受け、そこでの初演となるようです。

ピアノ曲はもともと21作のシリーズとして構想され、11曲目で中断したかと思いきや、以下の通り「光」の一部分として12曲目以降の作曲が再開されました。

XII 木曜日
XIII 土曜日
XIV 月曜日
XV 火曜日
XVI, XVII 金曜日
XVIII 水曜日

確度の高い情報筋によると、19曲目は「日曜日の別れ」のどこかのパートを他の4つのパートのテープと同時に演奏する版、20曲目は「KLANG 第1時間目」のシンセパートを使ったものということですが、私の予想では21曲目は「第3時間目」あたりが怪しいのではないかとふんでます。

studie.jpg

電子音楽を製作する人たちにとってはおなじみのソフトMax/MSPに付録として付いている数多くのパッチのサンプルの中にシュトックハウゼンの初期の電子音楽「習作II」が演奏できるパッチがあります。この作品のグラフィカル且つ全ての音楽イヴェントを克明に記譜したスコアが出版されていますが、そのスコアをもとにMax/MSPで演奏できるようにリアライズしたものです。演奏をスタートさせると音が鳴るだけでなく、音楽に合わせてスコアがリアルタイムで表示されるという非常に凝った造りになっています。
「ランダム・モード」というのを選択して再生させると、スコア内のイヴェントをシャッフルして演奏させる「遊び」の仕掛けもあります。

オリジナルの電子音楽がリアライズされたのは今から50年前ですから、当然このパッチでの演奏はオリジナル版より音色は非常にクリアーですが、やはり「あの時代」の空気感までは表現し切れていません。

実際シュトックハウゼンがコンピューター上でリアライズしたヴァージョン(このパッチかどうかは不明)を聞いた時もその結果に不満を感じたらしいのですが、その大きな理由が音量のエンヴェロープです。スコア上には直線で記されているこのエンヴェロープもシュトックハウゼンは手動でフェーダーを動かしてリアライズしたのですが、そこで生じる「生演奏的」なゆらぎが重要で、コンピューターでの演奏ではそこが正確すぎて気に入らない、ということのようです。

このあたりにシュトックハウゼンの電子音楽に対するスタンスが象徴的に表れていて非常に興味深いですが、シュトックハウゼン・ヲタクとしては、それでもこのパッチの存在は非常に貴重です。
ちなみにパッチに記されていたクレジットによると作曲者の許可を得てこのパッチを公開している旨が記されています。

moses_aron.jpgシェーンベルクの未完のオペラ「モーゼとアロン」はシェーンベルクの代表作であるだけでなく、「声」を音楽の中でどのように取り扱っていくか、という観点から見ても今なお非常に興味深い作品であり続けています。
大衆の前で話すことの苦手なモーゼはシュプレヒシュティンメ、雄弁なアロンはヴァーグナーばりの朗々としたテノールと対照的な歌唱法で作曲されているだけでなく、合唱(及び小編成の声のアンサンブル)もしばしば2群に分けられ、それぞれが通常の歌唱法とシュプレヒシュティンメに分かれて対比を見せます。
このオペラでの合唱パートは通常のオペラの合唱書法と全くかけ離れた非常に複雑で長大な対位法で構成されていて、バッハの受難曲の複雑な合唱パートを彷彿とさせますが、この2種類の唱法だけから実に様々な響きを生み出すことに成功していることは特筆すべきです。
シュプレヒシュティンメはシェーンベルクの発明した唱法ですが、これは長い声楽の歴史の中でも特筆すべき革命的な演奏法といっても過言ではありません。しゃべるように歌うことによるピッチやポルタメントのニュアンスが音響的にも音楽表現としても極めて強いインパクトを与えますが、それを複雑な合唱の対位法に取り込むことによってその効果は著しく高められます。特に最弱音で囁くように演奏する場所では声のノイズ的側面が強調され、大袈裟な言い方をすればラッヘンマン的な響きを予感させます。

ケーゲル指揮によるこの作品の演奏ではこうした声の表現が神経質なほどに研ぎ澄まされていて、見事に統率された合唱団の演奏には思わず身震いしてしまいます。
ソリスト、オーケストラも非常に緊張度の高い演奏を繰り広げていて、目まぐるしく変化するシェーンベルクの音楽の素晴らしさが余すところなく引き出されています。

スコアを見てみてみると、無駄のないすっきりとしたオーケストレーションが施されているのがよく分かりますが、部分的にはヴァレーズを思わせるような斬新な音響の組み合わせがあったりしてびっくりします。
しかしやはり大きな感銘を受けるのは緻密な合唱声部の書法です。単に歌うだけでも並の合唱団では全く無理ですが、暗譜して演技をしながら歌うとなると、ものすごい稽古の量が必要だと思います。

なぜ非常に短い台本の第3幕が完成させられなかったのか非常に気になりますが、同じく未完成に終わった「ヤコブの梯子」も偉大な作品であるというのは偶然であるとはいえとても興味深いです。

ursonate.jpgドイツのダダイストKurt Schwittersが1932年に完成させた音響詩の大作Ursonateを奇才ヴォイス・パフォーマーJaap Blonkが「朗読」したCDです。
音響詩とは意味のない抽象的な音素を詩のように組み立てたもので、詩の韻律などの音楽的な側面を極度に拡大させたものといえます。

例えば一行目は以下のような感じです。

Fümms bö wö tää zää Uu, pögiff, kwii Ee.

当然、声に出して朗読されることに意味があるのですが、音楽としての側面を強調するために付けられたタイトル Ursonate にふさわしく「4楽章」から構成された演奏時間25分あまりの大作です。

Kurt Schwitters本人による歴史的録音もCD化されていますが、このJaap Blonkによる演奏はそれを上回るといっても良いほどの壮絶なものです。
この作品には若干の音楽的な指示がありますが、朗読に際しての細部は朗読者にまかされています。
Jaap Blonkは声の幅広い領域を駆使してこの作品の音楽的側面を見事に表現していますが、膨大な量のテキストを目も眩むようなスピードで読み上げる名人芸には圧倒されます。

上のジャケット画像が発売元のHPへのリンクとなっていて試聴もできますので是非ご覧下さい。

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松平敬 - モノ=ポリ・ひとりの声のための交響曲

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