《猫の二重唱》はロッシーニの作として知られていますが、どうも偽作らしいというのは曖昧な情報として知っていました。
ようやく、この作品の成立についての経緯についての信頼できる記述(Schottの楽譜の2009年版の解説)を発見したので、備忘録がわりに書き記しておきます。
この形に仕上げたのは、イギリス人のRobert Lucas Pearsall(1795-1856)、ロッシーニ自身の作品も含む「つぎはぎ」作業によって作られました。
はじめのAdagioの部分は、デンマークの作曲家Ernst Friedrich WeyseのKatte-Cavatine(猫のカヴァティーナ)の編曲、最後の早い部分はロッシーニの歌劇《オテロ》の第2幕のRodrigoのアリアからの引用です。真ん中の8分の6拍子はPearsall氏によるもののようです。
WeyseのKatte-Cavatineの楽譜はここで見ることができますが、3拍子だった原曲が、4拍子に変更されているものの、猫の鳴き声を「歌詞」として使うアイデア、和声進行などは、そのまま引き写しているのが分かります。
Weyseの伝記の著者によると、1822年に出版されたこの作品の楽譜すらPearsallの編曲らしいとのこと。
猫の二重唱に使われた《オテロ》の中のアリアは、ここで聴くことができます(3分30秒あたり、NMLに登録していない方は時間制限あり)。これは、そのままなのですが、猫の二重唱の方をよく知っているので、このパッセージが出てくるとちょっと笑ってしまいます。
Weyseのヴァージョンは1825年にG.Bertholdのペンネームで出版されましたが、その後Schottによって1971年に出版された楽譜がロッシーニ作とされ、そのままロッシーニの作品として知られるようになったようです。