階名だけで作られた詩 〜 シュヴィッタース『so la so mi』


シュヴィッタースは、言語から意味性を取り除いた音声によって音響詩を作った。
ここで素材となっているのは一種の架空言語であり、予備知識がなければ、彼の音響詩を見知らぬ言語による詩だと勘違いする人も少なくないだろう。

彼の実験はここにとどまらず、数字のみによる詩、単独のアルファベットそのものを配列した詩など、通常の言語以外の要素による詩作の試みも行われた。

さて、ここで紹介する作品は音楽の階名(ドレミ…)だけで構成された詩である。

so la so mi
so la so mi
re re si
do do so
la la do si la
lo la so sai
la la do si la

特に音楽の素養のある人がこの詩を見たり聞いたりすれば、その階名(*1)が指し示す音が思い浮かぶであろう。これは、もう一捻りした音響詩といえる。

本リアリゼーションでは詩を朗読しながら、そこで指し示されている音をピアノで演奏してみたが、この詩全体がある有名な歌の引用であることがすぐに分かるだろう。
いわゆるレディメイドであるが、作品の途中までしか引用されていないことと、一部の階名が改変されているところに、シュヴィッタースのセンスがさりげなく刻印されている。(*2)

改変されている部分は「so la so mi」となるべきところが、「lo la so sai」となっているところ。「so la」の子音を揃え「lo la」とし、「so mi」も同様に「so sai」としてある。同じルールを適用するのであれば「so si」とすべきであろうが、そうすると改変した階名が別の階名になってしまうので、それを回避するとともに、o-a-o-aという母音のリズムを生かすべく、このような処理になったのであろう。

*1) ソは一般的には「sol」と綴られるが、(おそらく語調を揃えるために)ここでは「so」と表記されている。

*2) デュシャンがモナリゼに髭を書き加え、自身の作品にしてしまった「L.H.O.O.Q.」を想起する方も多いだろう。有名曲のメロディーの引用だけで作品を構成した音楽作品としては、ケージの「チープ・イミテーション」がよく知られている。この作品は、サティ「ソクラテス」の歌手パートのメロディーの引用のみを作曲素材としている。本リアリゼーションは、結果的にケージとの(おそらく偶然の)類似性を浮かび上がらせることとなった。

子音で埋めつくされた詩


「ursonate」などの音響詩で知られるクルト・シュヴィッタースの作品に、子音で埋めつくされた作品があります。
通常は母音の陰に隠れた子音が強調され、音響的に極めて特異な状況が生まれます。数ある彼の音響詩作品の中でもとりわけ革新的な作品と言えるでしょう。

以下にテキスト全文を掲載します。

 

The real disuda of the nightmare

ch
ch ch t
ch ch t t
cchdttt
chat!
chtatt
cht att at ee.
e.
chuatt
batt
bgatt
bgg
bbbgg.
cc
jjjji uut
ffr
uuuuiiii!
uuzuu ggg
bbg jjjji
zz uu oooo
nj
hz hz ggz
ggz kkiiuu
hu iiu hz
hhhh ggg
kkk or
jjj
zzr
tt trr uu
jjj uu
iii uuu
jjj uu
hh z
ff r
tz z

hhhh gg
jj iiii!!
kkkk iiii!!
hh   z
g t g
g t g t
fff rrrf
h
h uu
ooiioo
hhh uu
uu
jjj uu
frf g g zu u
gggttt jjj uu
u
uuu
ujuj
kkk opp
öö oo ii
huu
hhhuu
uuii
g g g z
g z
huuhuu
huu
ii oop
ii ooooii
uuuuii
ooooii
uuh g g kki
grr
curr.

一柳慧『ベルリン連詩』ラジオ放送

5月に演奏した一柳慧さんの『ベルリン連詩』が、NHK-FM「ベストオブクラシック」で放送されます。
7月5日19:30からの放送です。

お時間のある方はどうぞお聴きください。

一柳慧の音楽 コンポージアム2016から

「ビトゥイーン・スペース・アンド・タイム」 一柳慧・作曲
(10分38秒)
(指揮)秋山和慶
(管弦楽)東京都交響楽団

「ピアノ協奏曲 第6番“禅-ZEN”」 一柳慧・作曲
(20分40秒)
(指揮)秋山和慶
(管弦楽)東京都交響楽団
(ピアノ)一柳慧

「交響曲“ベルリン連詩”」 一柳慧・作曲
(39分47秒)
(指揮)秋山和慶
(管弦楽)東京都交響楽団
(ソプラノ)天羽明恵
(バリトン)松平敬

~東京オペラシティ・コンサートホールで収録~
(2016年5月25日)

リンク:番組ウェブサイト

家具屋さんで低音デュオが演奏

2016年 春季公演 第39回 ポスター(大)

半蔵門のお洒落な家具屋さんの中で低音デュオが演奏します。
プログラムは中世から今年の初演したばかりの作品まで、手抜きなしの本気モードです!

平河町ミュージックス第39回
2016年6月24日(金) 19:00開演
会場:ロゴバ ROGOBA DESIGN ON LIFE_Tokyo

出演:低音デュオ【松平敬(バリトン)、橋本晋哉(チューバ)】

プログラム:

近藤譲《花橘》
ギヨーム・ド・マショー《ご婦人よ、見つめないで下さい》
川上統《児童鯨》
ヨハンネス・チコーニア《犬は戸外で》
湯浅譲二《ジョルジョ・デ・キリコ》

『ムジカ・エンキリアディス(音楽の手引書)』より《天の王よ》
作曲者不詳《聖マグヌス賛歌「気高く、慎ましく」 》
中川俊郎 《3つのデュオローグ、7つのモノローグ、31の断片》

座席は全席自由席2,500円(消費税込、ドリンク付)
チケットのご予約、お問い合わせはこちらからお願いします。

モーツァルト『レクイエム』

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モーツァルトの『レクイエム』を歌います。

高津市民合唱団第24回定期演奏会

2016年6月19日(日)19時開演
ミューザ川崎シンフォニーホール

指揮:岩本達明

ソプラノ:藤崎美苗
アルト:布施奈緒子
テノール:望月哲也
バス:松平敬

オーケストラ:横浜シンフォニエッタ
合唱:高津市民合唱団

『現代音楽は怖くない』

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『現代音楽は怖くない』諸井誠著

この本は、「現代音楽が怖かった」私が現代音楽を中心に演奏活動するようになった原点となる本です。おそらく読んだのは中学生の頃。

この本は、しばらく手元になかったのですが、たまたま立ち寄った古書店で見つけたので、久々に読んでみました。

「現代音楽」と言っても、この本に出てくる作曲家はR.シュトラウス、ドビュッシーに始まり、最も新しいのがウェーベルン、メシアン、「現代」というよりは「近代」止まりのラインナップ。でも、この辺りの作曲家の作品の面白さが分かれば、その延長線上で現代音楽の面白さも理解できるようになります。

当時は、言及されている作品の音源を見つけるのも困難で、多くの作品は文章からその響きを想像するしかなかったのですが、私にはとても有意義な指南書となりました。

ちなみにこの本に続く指南書となったのがグリフィスの『現代音楽』、松平頼則『近代和声学』でした。コンサートや音源で現代音楽に触れることが困難だった中高生時代(主な情報源はFM)には、これらの本からの情報はとても貴重でした。

中学校で現代音楽ワークショップ

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低音デュオとして、下関の名陵中学校で現代音楽ワークショップを行いました。

まずデモンストレーションとしてケージの『アリア』を演奏、記譜法を簡単に解説した上で、生徒の皆さんに実際に図形楽譜を作成してもらいました。
初めはためらいがあったものの、描いた線が実際の音に変わる面白さが分かってくると、次々と斬新な発想が生まれてきました。
幾つかのグループに分かれて作成してもらった楽譜を2つ組み合わせ、二人で同時演奏することで二重奏を完成させました。独立して作った楽譜を同時演奏する発想は、当然ながらケージの手法を流用したものです。

楽譜をホワイトボードに張り出し、楽譜を見ながら完成したものを試演すると、楽譜と音楽の関係の面白さ(ある時は予想通り、またある時は予測不可能)に自然と歓声があがり、音楽づくりの面白さを体感してもらうことができました。

音楽室から見た下関の風景

音楽室から見た下関の風景

一柳慧『ベルリン連詩』

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今週は、一柳慧さんのオーケストラの大作、交響曲《ベルリン連詩》でソリストを務めます。
ずっとテノールのために書かれていたと思っていた(初演もテノール歌手が歌っています)このパート、声域が極限まで広く、練習に苦労しましたが、その成果を遂にお披露目する時がやってきました。

私は出演しませんが、一柳氏本人がソリストを務める新作のピアノ協奏曲も、図形楽譜を用い、内部奏法を多用したソロ・パートということで、こちらも興味津々です。

一柳慧の音楽
2016年5月25日[水]19:00 東京オペラシティ・コンサートホール

指揮:秋山和慶
東京都交響楽団

ピアノ:一柳 慧 *
ソプラノ:天羽明惠 **
バリトン:松平 敬 **
一柳 慧:ビトゥイーン・スペース・アンド・タイム(2001)
一柳 慧:ピアノ協奏曲第6番《禅 ─ ZEN》(2016)*[世界初演]
一柳 慧:交響曲《ベルリン連詩》(1988)**

リンク:主催者サイト

ここで、楽譜の一部が(低い解像度ですが)見られます。画像下部に、尋常でない跳躍を繰り返すバリトン・パートもあります。

[動画] 武満、ストラヴィンスキー、ヴァレーズ

昨年末のリサイタルより、さらに動画をアップしました。

武満徹『三月のうた』

私が編曲した二重唱版による演奏です。

ストラヴィンスキー『巨大な黒き眠りが』
ヴァレーズ『巨大な黒き眠りが』

ヴェルレーヌの同一の詩に付曲した歌曲の聞き比べです。両者とも、それぞれの作風を確立する前の作品という共通点に着目して比較してみても興味深いでしょう。

[動画] 山根明季子『水玉コレクションNo.02』


昨年末のリサイタルより動画をアップしました。

山根明季子さんの『水玉コレクションNO.02』です。
共演は中川俊郎さん、ピアノとトイピアノの音色を絶妙にミックスしています。

歌詞は全編パ行のみですべてファルセットで歌う指示がありますが、皆さんにはどのような音の水玉模様が見えるでしょうか?